札幌市厚別区の新札幌駅に程近い一等地に広大な空地が生まれた。面積は3000坪。サッカー場がスッポリ入ってもあり余る広さだ。この立地に、様々な食品スーパー進出の噂が出ていたが最終的にマンション用地として売却される見通しになった。
ここには、今年の夏ころまでホームセンターのトステムビバが所有者から土地建物を賃借して運営していた。トステムビバ閉店前から食品スーパー進出の噂が広まり、最有力候補として名前があがっていたのはアークスだった。
しかし、アークス進出には障害があった。と、いうのもアークスは食品スーパーの共同仕入れ会社であるシジシー北海道の盟主であり、新札幌周辺では同じシジシー北海道に加盟しているホクノースーパーが店舗展開していたからだ。
シジシー北海道に加盟している食品スーパー同士はお互いに商圏を守るという“紳士協定”がある。アークスがホクノースーパーの牙城である新札幌に進出してくればシジシー北海道の紐帯にひびが入ることは避けられなかった。
アークス関係者は言う。
「最初は新札幌進出に乗り気だった横山清社長も、最終的には同じシジシー北海道に入っているホクノースーパーを考慮したようだ」
この土地の所有者は高齢のため、土地売却を前提にしており食品スーパーでは合わないという見方もあった。
食品スーパー関係者によると、「あの土地は、坪42万円とされている。3000坪あるから約12億円。そこに建屋を作って食品スーパーにすると土地代込みで最低でも20億円はかかるだろう」
食品スーパーには投資と売上げに相関関係があるという。前出の横山社長が良く言っていることのようだが、『店舗に投じたカネの3倍を年間に売らなければ採算は合わない』――というものだ。
つまり、新札幌の用地に店舗を出すと20億円×3倍=60億円ということになる。一般的な食品スーパーは約600坪の店舗で年間17~18億円の売上げがある。以前は、20億円超の店舗が多かったが、デフレと激安化によって食品スーパーの個別店舗の売上げは年々減少しているのが実情。とても60億円の売上げは見込めない。
この土地から商圏範囲2キロを眺めてみると、ホクノースーパーのほかにもマックスバリュ北海道、さらに新札幌駅に直結したダイエー、低価格で知られる卸売スーパーもあり出店余地が少ないこともあったようだ。
結局、採算が合うのはマンションしかないと見られマンション用地として売却される見通しだ。ただ、マンションの販売は回復基調にあるとはいうものの底固いものにはなっていない。更地の状態が続くことになるかも知れない。
(写真は建物の取り壊しが進んでいる新札幌のトステムビバ跡地)