日本経済団体連合会と北海道経済連合会の年に一度の交流報告会が10月13日、札幌グランドホテルで開かれた。経団連会長は、5月末に御手洗冨士夫氏から住友化学会長の米倉弘昌氏に交代したが、米倉経団連にとって初の北海道訪問。迎える側の道経連は近藤龍夫会長以下5人の副会長が揃ったが、なぜか横内龍三北洋銀行頭取と堰八義博北海道銀行頭取の金融界の2人の副会長は揃って欠席した。
交流報告会のテーマは「民間活力による経済の再生と持続的成長の実現」。経団連側からは、税制改正の取り組みや科学・技術・イノベーションの推進、企業行動憲章の改定などが副会長らによって報告され、道経連からは食クラスター活動の推進、北海道観光の展開、人口減少・少子高齢化社会における高速交通ネットワーク整備の必要性について報告された。
交流会の報告は、用意した文書を読み上げるだけで、議論が深まらなかったが、交流会後の米倉会長の記者会見では北海道経済の印象や方向性についてナマの考えが披露された。
道経連が今年5月からスタートさせた食クラスター活動について、米倉氏は「北海道の強みである『食』をより育成していこうという『食クラスター』活動は、産官学金が連合しており良い取り組みだと思う。国際戦略総合特区を打ち出したことも素晴らしい」と地域が内発的に持続的成長を形づくることにエールを送った。
また、高速道路や新幹線などについて、「北海道における高速道路網は寸断されており、ネットワークが完成されていない。もう少し整備できれば農業やその他の産業の物流コストも下げられるし、観光産業のさらなる発展につながっていくのではないか」と述べ、 国土交通省の高速道路整備についての考え方は、表現の微妙なニュアンスが違ってきており期待感を示した。
新幹線は財源が問題としたうえで、「国と地方、民間がもっと知恵を出してどういうことが可能なのか検討したらいかがかと思う」とした。米倉会長は、道内の高速道路や新幹線について、「経団連として国交省への働きかけなどできることがあればやっていきたい」と今後、道経連と共同で要請活動を行うことも明らかにした。
例年行われる経団連と道経連の交流会は、懇親会的要素が強く具体的成果に乏しい。しかし、今回は食クラスター活動の評価や経団連として北海道の高速交通ネットワーク構築に協力する姿勢を見せたことで例年にない成果があった。今後、道経連が経団連を動かしてどれだけ国家レベルまで北海道の課題を引き上げていくか、近藤道経連会長の力量が問われてくる。
(写真は、米倉弘昌日本経団連会長・右と近藤龍夫道経会長)