日本経済新聞社・日本経済研究センターの主催で11日、札幌市中央区の札幌グランドホテルで「景気討論会」が開催された。パネリストとして道内からは石井純二北洋銀行(本店・札幌市中央区)頭取と丸谷智保セイコーマート(同・同)社長が登壇、北海道の景気体感を述べた。2人はともに北海道拓殖銀行の出身。拓銀時代は同じ部署で上司と部下の関係でもあった。P1080563(写真は、札幌で開催された日経と日本経済研究センター主催の景気討論会)

 石井頭取は、現在の状況を「外国人観光客の大幅増加が追い風で景気の持ち直し基調にある。昨年は154万人の外国人観光客が来道したが今年はさらに伸び、観光が全体を牽引する状況が続く。しかし、道北や道東では中国人観光客などインバウンド需要が取りこめておらず厳しさが残る」と分析した。
 
 丸谷社長は、「コンビニの個人消費は持ち直している。原因は雇用改善とインバウンド消費の増加など観光の好調が寄与しているためだ。当社グループはホテルを1つ持っているが客室単価は昨年と比べて1・5倍になっており効果は大きい」と述べた。
 もっとも個人消費には年齢層によって斑模様のようで、「POSデータから分析して20~30代の買い上げ額は110%の増加だが、年金世代は97%程度と差がある。当社の4000SKU(在庫保管単位)の平均価格は前年より3ポイント上昇、消費増税分を合わせると6ポイント増で生活に関わる商品は賃金上昇分よりも価格上昇が顕著」と指摘。今後は、物流費の増加が企業にはボティブローのように効いてくること、特に都心部での人件費上昇――などから安心して消費できるマインド醸成の政策が必要と強調した。
 丸谷社長は、『3軸による2極化』という指標も示した。それは、地方と都市、大企業と中小企業、若年層と壮年層でこの差はますます顕著に進むと見立てた。
 
 年末から来年にかけての景気予測について、石井頭取は「原油安、円安、外国人観光客増加が追い風になる状況が見込める。医療福祉や札幌市内の再開発に伴う資金需要も底堅い」と見通したうえで、中国経済の先行き動向が北海道経済の懸念材料とした。
 
 財務省が検討しているマイナンバーを使った消費増税還付策について、丸谷社長は「流通現場は専用の読み取り機を導入しなければならず、我々の店舗でも1店舗3~4台、全体で3000~4000台もいる。17年4月から還付を実施するなら今から着手しないと間に合わない。遠い所にある政策だと思う」と語った。         
 政策面で必要なことについて、石井頭取は輸出主導型から内需主導型の経済構造に移行させる政策とデフレ脱却に向けた取り組みを継続すべきと訴え、財政規律の維持にも対応することが必要と話した。さらに消費増税は先送りすべきでないと主張した。                                       
 北海道から要望発信として北海道新幹線の来年3月開業に向け、「道南圏からの2次交通を整備することで広域観光に結び付ける社会インフラ整備しなければならない」と述べたうえで、「高橋知事の公約である道産品輸出の増加(現状の600億円から1000億円に)のため、未整備高速道路網の早期開通と港湾の整備をすべき」と訴えた。
 
 丸谷社長は長期安定政権でなければできないことをやって欲しいと強調し、①規制緩和②好循環サイクルが確固たるものになった段階まで増税延期――を主張、さらに「北海道の農水産品をプレミアム市場ではなく大衆消費市場で競争力ある商品にするため、物流経費の多くを占める高速料金をあるカテゴリーはタダにするなど、大衆消費市場でもチルド、冷凍品が競争力ある価格にできるようにする政策が大切」と話した。


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