「白い恋人」が「サザエ」を救済――土産菓子の強力なブランド「白い恋人」を持つ石屋製菓(本社・札幌市西区)が道内で認知度の高いサザエ食品(同・同)の道内事業を承継することになった。石屋製菓は菓子事業とそれに関連する観光事業に特化してきたが、M&Aによる事業多角化にも間口を広げ始めた。(写真は、石屋製菓の子会社が承継するサザエ食品の本社店舗)
石屋製菓が、おはぎやおにぎり、弁当製造でデパート、スーパーなどにテナント出店しているサザエ食品の道内事業を承継するのは6月1日。サザエ食品が関東事業の不振で破綻に追い込まれ清算することに伴うもので、石屋製菓が100%出資で3月24日に設立した資本金1500万円の子会社が道内の従業員も合わせて引き継ぐ。
サザエ食品は年商約50億円で道内40億円、関東10億円の内訳。道内事業は堅調で利益は出ていたが、関東で展開してきた和菓子事業が足を引っ張り、昨年末に会社整理を決定、金融機関が仲介して石屋製菓に話を持ち込み、同社は堅調な道内事業のみを承継して存続させる変則的なM&Aを決めた。
サザエ食品は、1957年函館で創業、66年に札幌に移転して以降、三越札幌店にテナント出店したころから事業は成長軌道に入った。デパートの良い場所でテナント出店をするため、当時ライバルだった丸井今井本店に出店、三越札幌店との関係がこじれたこともあった。
弁当惣菜の関係者によると、「サザエ食品は、オリジナリティの高い商品というよりも徹底した二番手戦略でシェアを伸ばしてきた。道内では一定のブランド力があり、関東事業から撤退していれば自力再生できたかも知れない」と言う。
承継する子会社は 新サザエ食品という名称だが、6月1日付で引き継いだのちにサザエ食品に社名変更する。社長は、島田俊平氏。同氏は、旧拓銀出身で北洋銀行常務から2007年に賞味期限改ざん問題で信用力が落ちた石屋製菓の社長に就任。オーナー企業で個人商店的な経営体質を名実ともに上場可能な体質に作り替えた。同氏は、13年に相談役に退き石屋家3代目に社長ポストを譲っていた。
石屋製菓は、これまでビッグブランドの「白い恋人」をはじめとする菓子事業と菓子関連のテーマパークで事業を拡大させてきた。道内でしか販売しないことでブランド価値を高め、年商は約130億円。今回、サザエ食品の道内事業を変則的なM&Aで承継することは、石屋製菓が事業多角化に舵を切るきっかけになると言えそうだ。
サザエ食品の承継によって石屋グループは年商200億円まで手の届く距離になった。今後、北海道の強みである「食」と「観光」で石屋グループのM&Aを含めた影響力は一層大きくなりそうだ。