札幌市は15日、札幌市中央区北5西8の伊藤組土建名誉会長、伊藤義郎氏の邸宅跡に高層賃貸マンションを建設する住友不動産(本社・東京都新宿区)が建築基準法に基づく48条項(建築用途制限の緩和)適用を申請したことに伴い、周辺住民を対象にした意見の聴取会を「かでる2・7」(札幌市中央区)で開催した。(写真は、間もなく取り壊される伊藤義郎邸)
伊藤邸は、開拓時の札幌の原風景が残っているため保存か開発かで揺れたが、札幌市は、邸宅の建っている場所だけを開発して周辺の樹木は保全する地区計画を昨年9月に都市計画審議会の了承を経て決定。それを受けて住友不動産が昨年末に伊藤邸敷地約1・4haのうち約0・5haを取得している。
地区計画決定により第一種住居専用地域でありながら33mの高さ制限が撤廃され、100mの高層マンションが建てられるようになった。設置者から申請があればマンションは建てられるものの、建物に付随する自動車車庫は建築基準法上3階建て以上が建設できないことになっている。このため、住友不動産は高層車庫を建てられるように適用除外の48条項で制限撤廃を申請、市が周辺住民を対象に意見聴取会を行ったもの。
48条項適用には①周辺住民の環境を害さないこと②公益上止む終えないことーーの2つの条件が必要だが、手続きとして①公開の場で利害関係者の意見を聴くこと②それらの意見を踏まえて建築審査会が是非を判断ーーというプロセスを経なければならない。それらを経て最終的には市が決定する。
建設されるマンションは建築面積約1600㎡、地下1階、地上30階建てで高さ99・95m。延床面積は4万3500㎡で344戸が入居予定。48条項の対象物件となる自動車車庫は、エレベータ式3基で高さ87m、収容台数は236台。車庫は建物内に取り込まれる形状にするという。
市側から車庫がすべて利用された場合をシミュレーションした結果、騒音は環境基準以下で交通量も渋滞を引き起こす可能性がないことが説明され、「周辺の住宅環境を害する恐れがないと市は判断した」(札幌市都市局建築指導部)と報告がなされた。
この日集まった住民は35人。11人が意見を述べたが多くはマンション車庫から西8丁目通への出入り口での交通事故発生を危惧する声。「歩行者や自転車、車椅子利用者の巻き込みの危険がある」、「タクシー利用者が多いことを想定しているのか」、「クルマを持たない人が多い中でなぜ全戸数の7割の車庫が必要なのか、減らすべき」、「今でも冬場の除雪対策が不十分なのに交通量が増えたらさらに冬期間の渋滞に繋がる」などの意見が出た。
市はこれらの意見を建築審査会に報告、同審査会は5月末開催の会合で自動車車庫の48条項適用の是非を判断する予定になっている。
建築基準法はクリアしていても、高さ10mを超える建物の建設に関しては市の中高層建築物の建築に係る紛争予防条例があり近隣住民への十分な説明を義務づけている。住友不動産と設計の北海道日建設計、施工の伊藤組土建の3者は今後、説明会や戸別訪問でマンション建設の理解を得ていく考えだ。
(写真は、伊藤邸玄関前に設置された意見聴取会の開催を告知する看板=2015年4月13日撮影)