「黒いダイヤが復活する」―夕張市に隣接する空知管内栗山町で4月中旬から石炭の露天掘りが始まる。採炭事業に新規参入するのは、燃料販売業の札幌第一興産(本社・札幌市中央区)。道内での新たな炭鉱開発は1977年以来、38年ぶり。※露天掘り…石炭や鉱石が地表や地表近くに存在しているため坑道を掘らず直接掘り進む採掘法。(写真は、栗山町阿野呂第一炭鉱で露出している石炭層=札幌第一興産提供)
札幌第一興産が創業したのは、49年。住友石炭鉱業の石狩地区特約店として現・武田治代表取締役の祖父が興した。戦後復興と高度成長が重なり石炭需要も拡大したもののエネルギー事情が変化、70年には出光興産の特約店になって石油・ガス事業にも着手、現在は石油・LPG・海外炭が事業の柱で年商は88億6300万円(2014年3月期)。
輸入海外炭は本州の電力会社の石炭火力発電所向けに供給してきたが、武田社長はエネルギー地産地消の流れもあって「自社で採炭事業に参入したい」と2010年に栗山町の日出地区の土地(約16ha)に目を付けた。この土地は同社と関わりのある地主が所有、石炭がところどころに顔を出し一定の埋蔵量が見込めたためだ。
「慎重に検討した結果、“行ける”と判断して13年に採掘権を取得しました。その後、採掘事業計画書にあたる施業案を道経産局に申請、このほど認可を受けて本格着手することになりました」(林洋之総務部長)
炭鉱名は、阿野呂第一炭鉱新日出露天坑。土地を借りて同社全額出資子会社が採炭作業を行う。埋蔵量は3万8100tを見込み、年間1万2000t程度を生産して4年ほどでこの露天坑での作業を終える。現在は7人が在籍しているが採炭作業が始まるまで10人規模に人手を増やすという。ブルドーザーやホイールローダーなど採炭に必要な機材も既にリース契約を終えた。
この土地に顔を出している石炭は、三笠市から連なる幾春別層と呼ばれる石炭層でカロリーは5000~6000kカロリーと言われており比較的高カロリー。販売先は北電の国内炭専用火力発電所である奈井江発電所と砂川発電所になるという。
ところで、炭鉱界には古くからの神事があって、同社もこれに則り2月6日に「開山奉告祭」を行った。この奉告祭は現地で行うのが一般的だが、まだ雪が深く神事を行うのに適当ではないとして札幌市内の「さっぽろ芸文館」で行われた。その席には椿原紀昭栗山町長も出席、黒いダイヤ復活を町あげて応援する姿勢を示した。
雪解けが進む4月中旬には、現地で開坑式と安全祈願祭を行い、その後2ヵ月ほどかけて斜面から土砂を取り除いて炭層を露出させて採炭、初出荷は6月後半になりそうだ。
かつて栗山町内には坑内掘りの角田炭鉱があったが70年に閉山、町内での石炭業復活は45年ぶり。札幌第一興産では、第2、第3の炭鉱の開鉱を目指すとしている。
国内で石炭を採炭しているのは北海道だけ。露天掘りは石狩地方で7社が年間約70万tを生産、坑内掘りは釧路コールマインのみでこちらは年産50万t規模。