全国の個性溢れる起業家を発掘するインディペンデンツ(本社・東京都豊島区)は10日、早大名誉教授で日本ニュービジネス協議会連合会副会長の松田修一氏の講演と北大発ベンチャー2社の事業計画発表会を札幌証券取引所2階会議室で開いた。松田氏は『文科省が進める大学発ベンチャーの一体改革』をテーマに講演、その後、「調和技研」の中村拓哉代表取締役と「医化学創薬」の外村幹雄代表取締役がそれぞれ事業計画を発表しIPO専門家などのアドバイスを受けた。(写真左は調和技研の中村拓哉氏、写真右は医化学創薬の外村幹雄氏)
インディペンデンツは、全国で起業家を発掘し、新規株式公開(IPO)に向けた事業計画発表会を全国で開催している。道内企業を対象にした札幌での発表会は2年前から始めており、これまでに「エコモット」や「バイオマテックジャパン」、「エムリンク」、「日本アレフ」などが事業計画発表を行っている。
10日に行われた講演では、松田氏が大学発ベンチャーの現状と文科省が始めた同ベンチャーの一体改革などについて持論を含めて話した。松田氏は、「大学発ベンチャーは全国に約2000社あるが、法人税を払っているのは3割で残り7割は赤字。とりあえず呼吸している会社が大半を占め世界の常識から言っても考えられない」と強調、特許料収入も1件当たり17万円でお小遣い程度にしかなっていない現状を説明した。
(写真は、講演する松田修一早大名誉教授)
こうした中で文科省は、新産業創出拠点プロジェクト(START)を始めたほか、今年から国立4大学(東大・京大・東北大・阪大)の研究成果に事業化投資を解禁したことに言及、「これらの政策はアベノミクスの重点課題のひとつに位置づけられ大学発ベンチャーの出口戦略整備と言えるもの。国を挙げて変化を加速させており、大学発ベンチャーの環境条件はがらりと変わるだろう」と期待感を示した。
続く事業計画発表会は、まず北大大学院情報科学研究科調和系工学研究室で研究された人口知能技術を使って観光イベント情報などをスマホなどに配信するアプリを開発した「調和技研」の中村氏がプレゼン。
「紙媒体やネット媒体の観光イベント情報などのビッグデータを人工知能で一人一人に合った情報として提供する無料アプリ『ぴも~る』は、企業のマーケットリサーチや広告も配信できる」と述べ、現在は札幌圏のみだが16年度には全国20拠点に広げ、年間売上げも15年3月期見通しの4900万円から17年3月期には2億円台を見込むとした。
続いて、タンパク質や血液などにある糖鎖の合成・解析技術を医薬品開発へ応用する「医化学創薬」の外村氏が事業内容を説明。「最先端の糖鎖解析技術と高速合成法をコア技術として診断薬や抗体薬を開発するため海外の医薬メーカーとアライアンスを組む考えだ」と語った。抗体医薬品は医薬品の主流になりつつあり、20年には5000億円市場と予測され、「東大発のバイオ医薬品ベンチャーで13年6月にマザーズ上場したペプチドリームをお手本にしたい」と語った。
2社のプレゼン後には、監査法人や知財専門の弁護士などがアドバイス、「調和技研は東京在住の道産子を対象にクラウドファンディングで資金調達したらどうか」や「紙媒体フリーペーパーとの差別化よりもむしろ共存を検討しては」、「医化学創薬の資金調達規模はいくらを想定しているのか」「ペプチドリームはベンチャーキャピタルが入っておらず個人投資家数人が2億円を出した。医化学創薬もそちらも検討したらどうか」など意見が出ていた。