札幌証券取引所の小池善明理事長が21日の定時総会で再任され2期目がスタートした。小池氏の1期目が始まった3年前は、道内の経済界に札証不要論が渦巻き、逆風の中で舵取りをせざるを得なかったが、当時と比べて札証の存在意義は格段に高まっている。小池体制1期目の成果は、道内経済界の“離れ”の位置づけだった札証を母屋の中に入れたことにある。(写真は、2期目に入る札証小池理事長=左から3人目)
札証の理事長は、長く札幌商工会議所の会頭が兼務するポストだった。札商会頭に高向巖氏(北洋銀行元頭取)が就いてからは名誉会頭に退いた伊藤義郎氏(伊藤組土建名誉会長)が引き続き理事長を務めるなど一線を退いた経済人が資本市場のインフラである証券取引所のトップを務めるという不活性な運営体制だった。
証券市場の東京一極集中が加速する中で、全国の地方証券取引所が相次いで閉鎖に追い込まれ、最北の弱小証取である札証もその荒波に呑み込まれるものと思われた。伊藤体制が続いていればその可能性は高かっただろう。
その伊藤氏の後継指名で誕生したのが小池理事長だった。小池氏はJR北海道で財務を担当、監査役を経て子会社のトップに就いていた。伊藤氏は当時道経済同友会代表幹事だったJR北海道坂本眞一会長に相談、坂本氏の推薦もあって小池氏に白羽の矢が立った。
小池理事長誕生に際しては、「幕引き役を託された最後の理事長」という声も出るほど冷たい視線が道内経済界から注がれたが、小池氏は着々と布石を打って行く。アンビシャンス市場の上場基準を緩和してプレーヤーが活躍しやすいフィールドを整備、東証を目指すためのステップアップ市場と明確に位置づけるなど札証アイデンティティを構築していった。
小池氏の真骨頂はフットワークの良さにある。経済界重鎮とも意見交換を厭わず、いつの間にかペースに巻き込んでいくのが小池流だ。距離があった経済界との間合いを縮め札証ファンとも言える応援団を形成、アベノミクスの追い風もあってこの3年間で道内経済界にあった札証不要論は払拭された。
応援団を理事に招き入れ当事者にしてしまう実行力も光る。小池理事長2期目に新たに経済界から理事に就任したのは、アインファーマシーズの大谷喜一社長と北洋銀行柴田龍副頭取、北海道銀行笹原晶博副頭取でアークスの横山清社長は引き続き理事を務める。
「新体制は最強のメンバーで固められた。攻めて、攻めて道内経済活性化に貢献いていきたい」と理事の松浦良一上光証券社長は語る。
これまで“離れ”で存在感の薄かった札証が堂々と母屋に陣取る体制が整った小池体制2期目は、新規上場という果実をどれだけ獲得できるかによって評価が定まることになるだろう。