全国初の社会医療法人同士の合併として注目されている「孝仁会」(釧路市)と「硯心会」(札幌市)の合併。合併後第一弾の事業としてスタートするのが、札幌市西区宮の沢にある旧東洋水産北海道工場跡地を利用した新病院の建設。既に昨年、土地取得を終えており来年初めに着工し2016年10月にも開院する予定。これを表舞台とすれば、裏舞台は病院に不可欠な調剤薬局の神経戦。ある調剤薬局全国チェーンは、開院を見越して旧東洋水産跡地の隣接地を先行取得した。表舞台以上に熱い競争が繰り広げられている。(写真左は旧東洋水産北海道工場跡地、写真右のフェンスに隣接した道路沿いの2階建て住宅を日本レーベンが取得した)
釧路孝仁会記念病院を中核とする孝仁会と心臓血管センター北海道大野病院を運営する硯心会の合併は、昨年10月に孝仁会が旧東洋水産工場跡地約3500坪を約14億円で取得した時から囁かれていた。と、いうのも、この土地の入札を巡って名乗りを上げていたのは孝仁会と硯心会だったものの、硯心会は入札直前に突如キャンセル。水面下で孝仁会との提携・合併交渉が始まったと見られていたからだ。
実際、孝仁会の同土地落札後に両法人は監督権限を持つ道庁に合併申請を行い、3月3日付で合併承認を得た。医師確保の問題や病床数の制限、大野病院の建て替えが迫っていたことなど合併は諸条件が重なった結果だが、翌4日にはホテルオークラ札幌を会場に記者会見が行われた。孝仁会の齋藤孝次理事長と硯心会の大野猛三理事長が合併承認書を掲げながら旧東洋水産工場跡地に「北海道大野記念病院」を建設することを晴れやかに表明した。
そんな表舞台の動きがあってから数週間後、新病院建設予定地の隣接地をメディカルシステムネットワーク(本社・札幌市)の子会社、日本レーベン(同・同)が取得した。東証一部上場のメディカルシステムネットワークは子会社に調剤薬局「なの花薬局」を全国展開するファーマホールディング(同・同)を抱え、日本レーベンは土地や建物を所有して調剤薬局などに賃貸するグループ企業。
土地登記簿を見ると、工場跡地に隣接する約40坪の土地を3月27日付で取得している。ただし、登記は条件付所有権移転仮登記で売買代金完済後に本登記されることが記されている。40坪と言えば調剤薬局を開設するには十分なスペースだ。新病院開院後の調剤ニーズを取り込もうとする先行取得であることは間違いないだろう。
ただ、病院が発行する処方箋はこれまでの院外化から院内化に揺り戻す方向も出てきており、今回建設される新病院は院外処方か院内処方のどちらを選択するのかは明らかになっていない。日本レーベンが条件付で土地を取得したのはそうした不透明さがあるためと思われる。
ともあれ、新病院建設が具体的に明らかになってからの素早いメディカルシステムネットワークの動きは、調剤薬局同士の競争が激しさを一層増していることを端的に現していると言えそうだ。