中国系資本が所有する「夕張鹿鳴館」、存続の危機

観光

 夕張市にある国の登録有形文化財「夕張鹿鳴館」を中国系資本の「元大グループ」が所有してから2年、建物の存続が危ぶまれている。昨年11月で一般公開を終了、今シーズンは閉鎖されたままで建物には修繕の手も入っていない。このまま休館が続けば「夕張鹿鳴館」の歴史的価値が毀損されかねない。(写真は、夕張市鹿の谷2丁目4番地にある「夕張鹿鳴館」)

「夕張鹿鳴館」は、旧北海道炭礦汽船が役員の交歓や来賓の接待のため1913年に「北炭鹿ノ谷倶楽部」として建設。敷地面積約8万5000㎡、延べ床面積約1万5000㎡、広大な庭園に囲まれた木造平屋建ての建物は当時の連築技術の粋を集めた本格的和風建築。

 1954年に昭和天皇・香淳皇后が宿泊、58年には上皇陛下も宿泊。また、99にはNHKの連続テレビ小説『すずらん』の撮影にも使われた。2007年に経済産業省の近代化遺産に指定され、11年には国の登録有形文化財に指定されている。

 北炭の炭鉱閉山により「夕張鹿鳴館」が北炭から夕張市に売却されたのは1984年。市は94年から一般公開を開始。しかし、2007年に財政破綻したため指定管理者制度を導入、スキー場やホテルなどのリゾート施設とともに加森観光がこの施設も管理することになり公開を続けた。
 しかし、こうした歴史的建造物は傷みが激しく維持存続には継続的な修繕が必要になる。多額のコストがかかるため、加森観光は08年に指定管理を取りやめた。

 その後、テクノ(小樽市)が一般財団法人を設立して建物を市から無償で譲り受け、レストランなど観光施設して利用したが15年に休業した。

 17年2月になって加森観光はリゾート4施設の指定管理も返上、そのタイミングで元大グループが市から4施設を約2億4000万円で買収したが、「夕張鹿鳴館」の建物も(土地は市が所有)同年8月、テクノから同グループに売却された。
 元大グループは、市に各施設を長期保有する意向を示していたが、19年3月に香港系ファンドに4施設を約15億円で売却。しかし、「夕張鹿鳴館」の建物はそのまま保有を続けている。

 元大グループは、18年4月から11月まで「夕張鹿鳴館」の一般公開を実施し、その後は冬季休業に入った。19年になって公開シーズンに入る前、同グループ関係者は市に「傷みが激しく4月以降も修繕が必要」と報告。その後、市への報告はなく今シーズンの公開期間もまもなく終了する。

 NPO法人「ゆうばり観光協会」の多喜雄基理事長は、「夕張の遺産なので、できるだけ早く営業を再開してほしい。閉鎖したままでは雪下ろしなどボランティアも集まらなくなり屋根の傷みも激しくなる。このままでは夕張から貴重な観光資源がなくなってしまいかねない」と嘆く。

 元大グループは、今年3月、中国の書家が書いた漢詩などを夕張鹿鳴館に展示して関係者を集めた宴を催した。将来的には書の展示館にする意向。ただ、その後は動きもなく来シーズンの公開も見通せない。「夕張鹿鳴館」は存続の危機に直面している。

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER