観光の国内マーケットは西高東低が続いている。東日本大震災以降、東北・関東・北海道は前年割れが続き九州新幹線が全通した九州は縦軸に各県とも良くて観光入り込み客は前年比200%だという。北海道は9月単月で何とか前年並みを確保したが、北海道観光の将来に必要なものは何か。阿寒グランドホテルなどを運営する鶴雅グループ社長で北海道観光振興機構副会長を務める大西雅之氏が先週、日経の景気討論会で観光再生の鍵を語った。(写真は日経討論会会場)
大西氏は震災後に阿寒湖にあるアイヌコタンの長老に呼ばれて『今回の震災は人災である。アイヌはカムイを畏れ敬い、それを守り忘れないために地名に残してきた。堤防決壊や原発の鉄鋼板が溶けるようなことは想定内のこと。アイヌは見えざるカムイを想定して生きてきた』と語りかけられたという。
「アイヌの知恵は日本人の生き方に示唆を与えてくれる。アイヌの知恵が残る北海道はこれからの日本人がどう生きていくか――精神的なことを含めた受け皿になれる」と大西氏は前置きし、観光産業は北海道を牽引できると訴えた。
大西氏は3つのポイントを挙げる。①1次産業や食品加工など製造業との連携をもっと強めること②道が裾野の広い観光産業に向けて成長戦略を描くこと③航空政策の弾力運用――。
航空政策については、2000年に航空自由化に向けた転換で誰も得をしなかったと大西氏は語り、道内では新千歳空港に離発着の81%が集中、残り8つの空港が19%を分け合う構造になったと指摘。新千歳は道内のハブ空港になっている以上、徹底してハブ化を推進すべきだと強調した。
そのうえで、「新千歳空港への中国機乗り入れは現状の5倍拡大できるはずだ。また、新千歳、函館、釧路、女満別をLCC(格安航空会社)のネットワーク空港として積極的な導入政策を取るべき」とする。
大西氏は3つのことが実現すれば厳しい状況を打開する糸口が掴めると確信している様子だった。
道内の観光産業にとって海外からの観光客を北海道に誘導することは不可欠。そのためには北海道が他の地域や他国との競争にどう打ち勝っていくか――北海道がひとつにまとまれるかどうかが大きなポイントだ。
道内に国際マーケット、滞在マーケットを吸引できるリゾートをいかに育てていくか、単なる温泉リゾートでは競争に勝つことはできない。「道内の観光地は、各地域で国際リゾートを地域ぐるみで目指していく取り組みが必要」と大西氏は結んだ。