16年、オーストラリアからのスキー客は大きく減った。理由は宿泊費や食費の高騰だ。ニセコエリアと競合するカナダのウィスラーに多くのスキー客が流れた。しかし、吉田氏は「それほど心配していない」と言う。
なぜなら、ニセコエリアではパークハイアットやザ・リッツカールトンという札幌にもない世界に誇る5つ星ホテルの建設が始まっており、リゾート地のブランドとしてニセコエリアの地位は揺るぎないものになると見通しているからだ。
「今後のニセコエリアは量よりも質で勝負をしていかなければならない」と吉田氏は指摘する。世界ブランドのリゾート地として否応なく質の世界競争に入らざるを得なくなるという訳だ。
夏のコンドミニアムには電気がついていない――冬とのギャップが指摘されてきたこの地区だが、通信環境やインターナショナルスクールの開設で日本人を含めて外国人のロングステイも徐々に増えてきた。
「通年型長期滞在地を目指して夏の自転車レースを3つ誘致しているが、自転車レースは帯同者が多いのが特徴。リフトで自転車をグランヒラフの頂上まで運び、そこから降りてくるフロ―トレイルも東急リゾートが今夏から始めた。パウダースノーとあまり言わずに夏に観光客をもっと呼び込もうと活動している」(吉田氏)。
今後のニセコエリアについて、「北海道新幹線開業はもちろん、札幌オリンピック招致によってアルペンスキー会場として利用されれば世界のリゾート地の完成形になる」と吉田氏は言う。早期の観光目的税の導入により看板や道路など観光インフラの整備を行うことも必要だと述べた。
大きな課題として掲げるのは、外国人従業員の子弟教育と地元の子供たちの語学教育。「中高一貫校によって海外の大学入学資格が得られる国際バカロレア認定校をニセコエリアに設置するなどして、課題を解決しようと観光協会でも動いている。今、この地区で最も頭の痛い問題が教育問題だ」(吉田氏)と訴えていた。
羊蹄山一周マラソンの実現や公道を利用した自動車ラリーの開催など、「次々に仕掛けを作って通年で観光を楽しめる地域にしたい」と吉田氏は結んだ。