建築家・隈研吾氏「アフターコロナ、魅力増す札幌のまち」、北海道ファシリティマネジメント協会で講演

ファシリティマネジメント

 一般社団法人北海道ファシリティマネジメント協会(略称HFMA)は13日、札幌市中央区のニューオータニイン札幌で「令和3年HFMA交流懇親会」を開催した。スクール形式で500人収容の宴会場に約80人が出席、二酸化塩素をガス化した空間除菌も行うなどコロナ対策を徹底して開催された。建築家で東京大学の特別教授・名誉教授の隈研吾氏による特別講演が行われた。(写真は、講演する隈研吾氏)

 隈氏は、「未来の北海道・さっぽろまちづくり」をテーマに約40分間講演した。以下、講演の要旨を掲載する。

「コロナによって建築の歴史は折り返し点を迎えている。これまでは、一言で言えば集中化、都市化の歴史だった。都市では土地が足りなくなって20世紀初めにはニューヨークで超高層ビルが建つようになり、高層化への流れとなった。しかし、それによって人は幸福になったかというと甚だ疑問。そこに集まることによって密になり、精神的にも肉体的にもストレスになっているからだ」

「20世紀後半から、情報システムの世界では自立分散が言われ始めた。大きなコンピューターからパソコン、スマートフォンはまさにその流れに沿ったものだ。しかし、人は集中化、都市化のモデルから抜け出さずに今まで来てしまった。そのツケがコロナという形で表面化した。これからは、自立分散でないともたないのではないかと思う」

「キーワードは、自立分散と自然への回帰だ。都市化に向かって坂道を上がってきたが、地球環境からみても、このまま都市化を進めていくと生物や地球がもたない状況が来ている。自立分散と自然という流れは、コロナで始まったわけではなく、既に2000年頃から始まっている。その頃から明らかに木の建築が増え始めたからだ。木の建築が地球温暖化防止になるという研究結果が出てきたこともあって、世界中で増えている。自然へという流れが材料面でも出てきている」

「赤レンガや時計台など札幌には、他の都市にはない札幌らしい古い建物があってそれらは魅力的なものだ。こうした古い建物を生真面目に保存するケースが日本では多いが、例えばフランスには保存建築士という資格があって、その人たちを交えて設計をすることが当たり前になっている。その人たちは保存しながらどう使うかの専門家なので、柔軟な提案をしてくれる。古い建物を受け継ぎながら未来に繋いでいくことが行われている。札幌は、そういうことが向いている場所だと思う」

「私は、世界の多くのまちで仕事をしているが、北海道の魅力は景観や人間性を含めて非常にレベルが高い。その中でも札幌には寛容性があってまちの楽しさもある。札幌は、分散と同時に賑わいがあって“いいとこどり”ができる恵まれたまちだと思う。まちの賑わいが激しくなると自然がなくなってしまうし、賑わいがなくなってもつまらなくなる。賑わいと自然の両立を目指したまちづくりをやっていけば、非常に可能性が高いまちになると思う」(終わり)

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