2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の設計者で建築家の隈研吾氏(東京大学教授、隈研吾建築都市設計事務所主宰)が19日、札幌市内で講演した。一般社団法人北海道ファシリティマネジメント協会(略称HFMA、会長・吉田洋一元道教育長)の主催で開催された「2030冬季オリンピック・パラリンピック招致応援特別講演会」のメイン講師として招かれたもので、会場となった札幌市中央区のカナモトホールにはHFMA会員企業や行政、企業、大学の関係者など約1000人が熱心に聴講した。(写真は、講演する隈研吾氏)
テーマは、『国立競技場のコンセプト』。隈氏は、最初の建築家ザハ・ハディド氏の案では最高の高さが75mだったがそれを47・4mにしたことで、明治神宮外苑の森に溶け込むようにすることができたことが特徴の一つだと強調。その他にメインの柱はSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)構造であっても木を多用して木の印象を強くしていること、周囲の森に合わせるように東京の野の草を26種類組みあわせて緑をいっぱいにしたことも特徴に掲げた。
屋根の庇(ひさし)が重なった形にして風が抜けるようにしている点に触れ、「庇を重ねて風通しを良くすることは日本建築が昔からやってきたこと。この技を現在に蘇らそうと設計した」とも述べた。
日本の伝統建築は小径木(直径の小さい木)文化である点にも触れ、「国立競技場には日本で一番多く流通している直径10・5㎝の寸法の小径木を組み合わせて使っている。法隆寺五重塔は7世紀に作られ1400年経っている。木の建物は作り方を工夫してメンテをすればそれだけ持つ。(法隆寺五重塔は)庇を重ねることで木を守り、小径木を組み合わせて作っているので取り換えも簡単。国立競技場は小径木をパネル化して、パネル1枚でも簡単に取り換えられるようなボルトの設計をした。1400年持つ作り方をしている」と話した。
2030年に冬季オリパラ招致を進めている札幌・北海道については、「北海道は環境の分野では世界的なブランドになっている。景観や自然、食材など世界に誇れるものばかりだ。こうした環境をうまくアピールすれば2020年東京オリパラの次の段階のオリパラが実現できるのではないか」と語った上で、「私はIOC本部を建て替える際の建物のコンペ審査員をアジア代表としてやらせてもらった。審査の場でも環境の話が大半だった。世界が求めているものとIOCが追求しようとしているものの接点は北海道にあると思う。2030年冬季オリパラの招致期限までにそれからがうまく整って、2020年東京オリパラのさらに先を行くオリパラが実現すれば良いと期待している」と締めくくっていた。