北海道経済連合会は7日、札幌市中央区の札幌パークホテルで「宇宙セミナー」を開催した。道経連など経済7団体は「北海道航空宇宙推進会議」を設立して航空宇宙産業の促進に向け活動しており、このセミナーもその一環。広尾郡大樹町で小型ロケット打ち上げに取り組むインターステラテクノロジズのファウンダー、堀江貴文氏が講演したほか、準天頂衛星を使った地理的空間情報の活用や高精度測位事業の取り組みなどについて講演が行われ、関係者約650人が参加した。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください
(写真は、北海道の宇宙産業の優位性について話す堀江貴文氏)
注目を集めたのは、堀江氏の「北海道の宇宙産業開発~未来の夢を語ろうじゃないか~」をテーマにした講演。堀江氏は、「北海道でロケット発射をするのは、広い土地があって人も少なく、打ち上げ基地を作りやすいことに加えて、東と南に向かって発射できること。2方向に発射できる地理的な優位性は世界的に見ても稀だ。しかも国内でロケット関連部品をすべて調達できるため、北海道の宇宙産業には希望しか感じない」と北海道の優位性を強くアピール。
堀江氏は25年ほど前にBUG子会社でアルバイトをしていた時の話を紹介。「札幌のテクノパークにも良く来ていたが、その時にインターネットが出てきて、私は『世の中が変わる』と熱くなっていた。そのことを話しても浅田さん(一憲氏=オープンループ創業者)以外は皆ポカンとしていた。それと同じことが宇宙産業でも起きる」と語ったうえで、「ロケットベンチャーが少ないのは、“マックスQ”を超えるのが難しいからで、米国でもその谷を超えられずベンチャー企業が死屍累々(ししるいるい)。でも、そのハードルを超えるとトントン拍子で進む」と語った。
また、春にMOMO2号を打ち上げることに触れて、「打ち上げを成功させ、2年後には衛星を軌道投入すると熱狂が始まるだろう。衛星は面白いということになって大樹町の周りには部品や整備のための工場が集積して1万人規模のマチができる。心配される技術者不足は、EVに置き換わる自動車産業からどんどん集まってくるだろう」と訴えた。
最後に、「ロケット産業は、夢と希望があって、特に発射の瞬間は年代問わず見る人たちの心をワクワクさせる。コロンブスが大海原に向かって航海を始めたような夢があってポジティブになれる。そんな心理的効果も大きい。是非、北海道の主力産業になって欲しい」と結んだ。
セミナーでは、公益財団法人国際研修交流協会のG空間産業室長の吉田富春氏が「地理空間情報を高度に活用できるG空間社会の実現を目指して」をテーマに講演、「2020年の東京五輪でG空間社会でどんなことができ、世界に見せることができるかの研究を進めている」と語った。吉田氏は、準天頂衛星を利用した高精度時刻同期の機能を利用して、ホンダが栃木県の自動車工場でナノ単位で制御できる車体プレス用に使用実験を始めることを紹介した。
(写真は、講演する吉田富春氏)
また、三菱電機電子システム事業本部高精度測位事業推進部技術グループ担当部長の曽根久雄氏は、「安全運転支援・自動走行など高精度測位ソリューション~衛星利活用による高精度事業に関する取り組みについて~」と題して講演。11月に高精度測位端末として各種ビジネスユーザー向けに小型アンテナとスマートフォン程度の受信機を市販することを明らかにした。
(写真は、講演する曽根久雄氏)