札幌証券取引所は21日、IPO(新規株式公開)の異業種勉強会『2013年のIPOを振り返り、今年以降のIPO市場を占う』を開催した。4回目となる今年の勉強会には、道内の上場を目指す企業関係者や証券関係者、VC(ベンチャーキャピタル)関係者など約30人が出席。赤れんが法律事務所代表の杉山央弁護士やジャフコ北海道の渡辺正人支社長ら5人のパネルディスカッションに聴き入った。(写真は、道内のIPOについて討議されたパネルディスカッション)
昨年のIPOの振り返りで、モデレーターを務めた仰星監査法人パートナー・福岡オフィス長の重見亘彦公認会計士は、「09年の19社から13年は54社まで回復した。07年以前は100社以上のIPOが続いていたことを考えれば、まだまだ回復も5合目だ」と述べたうえで、昨年の特長として①初値が公募価格を上回ったのは54社中52社だったこと②12年のソーシャル一色から業種はバランス良く収まったこと③子会社上場が復活してきたこと――を掲げた。また、IPO企業の社長の平均年齢は50~53歳で推移、主幹事証券と監査法人は、野村証券とトーマツで半分を占めたことも報告された。
杉山弁護士は、「昨年から道内の若手経営者からIPOの相談を受けるケースが多くなってきた。一昨年に札証に上場した北の達人コーポレーションの影響で道内にはIPOの芽がたくさん出てきた」と“北の達人効果”が広がっていることを指摘した。
ジャフコの渡辺支社長は、「北海道のIPOは、12年11月のジーンテクノサイエンス(東証マザーズ上場)以降出ていないが、昨年は投資会社や証券会社が頻繁に札幌入りしていた。現在、道内の上場予備軍は5~10社あってIPOを目指して頑張っている」と述べた。
岡三証券の小塚正樹企業公開部長は「札幌に証券取引所が存続している意義は大きく、我々も北海道には力を入れている。北海道の光る会社を見つけ出してIPOに繋げるには良い環境になってきた」と期待感を示した。
14年の展望について、金融商品取引法の改正や会社法の改正動向も議論され、アカウンティング・アシスト代表取締役の茂田井純一公認会計士・税理士は、「IPO企業では監査法人による財務監査が5年から2年に短縮される見通しで実務面の負荷が減ることや一定規模以下のIPO企業では内部統制が3年間免除されること、最低株主数300人から200人に引き下げることなどIPOがやりやすくなる傾向にある」と見通しを示した。
また、話題になっているクラウド(群衆)ファンディングによる資金調達について、杉山弁護士は「法的根拠をしっかり把握したうえで取り組む必要がある。個人的には資金調達が東京と一桁違う札幌ではクラウドファンディングは効果的な資金調達法になるのでは」と訴えていた。