ニセコ観光の立役者、ロス・フィンドレーさん率いるNACが東急グループ入り

経済総合

 ニセコ観光の立役者、ロス・フィンドレーさんが率いるNAC(本社・虻田郡倶知安町)が、東急不動産(同・東京都渋谷区)の子会社、東急リゾーツ&ステイ(同・同)に買収された。NACが会社分割して全株式を譲渡したもので、創業者ロスさんは、エグゼクティブアドバイザーとして引き続き、NAC事業に関与する。買収は、2025年12月11日付で行われ、買収額は非開示。(写真は、NACの東急グループ入り会見。左からNAC前社長のロス・フィンドレーさん、NAC新社長の松原大輔さん)

 ロス・フィンドレーさんは、1964年オーストラリアのメルボルン生まれ。キャンベラ大学でスポーツ科学を専攻。卒業後は、アメリカやスイスでスキーのインストラクターを経験。1989年に札幌のスキー学校のインストラクターになり、ニセコのパウダースノーに魅了されて、1992年倶知安に移住。建設会社に勤務しながらスキーのインストラクターを続け、94年にNACを設立した。冬のスキー観光しかなかったニセコ地区に、ラフティング、マウンテンバイクなど夏の体験観光を加え、通年型観光地に導いた立役者的な存在。観光庁から「通年型アウトドア体験観光」の分野で観光カリスマにも選ばれている。

 一方、東急不動産グループは、1985年にニセコ高原観光を買収してニセコに進出、40年間この地で事業展開していた。2024年からは、本拠地のニセコ東急グラン・ヒラフを中心にアジアNo.1の国際的リゾートの実現を目指し、グループ全体で100億円規模の投資を行う「Value up NISEKO 2030」を進めている。そうした中で、課題となっていたのが、夏の集客。ニセコにおいて、冬に強い東急と夏に強いNACが一体化することで、通年型観光の充実を図ることが可能になるとして、両社の利害が一致した。

 2025年12月16日、東急グループが「Value up NISEKO 2030」に基づく新施設として整備したエースゴンドラ山頂駅舎2階の新レストラン「NEST813」で発表が行われた。ロスさんは、「ニセコで30年間仕事をしてきたが、永遠にはできない。どこかで区切らなければならない。ニセコ東急グラン・ヒラフの広いゲレンデは、夏のアクティビティとしていろんな遊びができる。国定公園なので、そこを考慮して今後どういうことができるかを詰めたい。NACの社員は、アクティビティの領域が広がるためワクワクしている」と話した。

 東急リゾーツ&ステイ取締役執行役員で、ニセコ東急グラン・ヒラフ統括総支配人の松原大輔さんは、「世界中から集まってくる冬のお客に、新しい価値提供のために投資を続けている。世界に誇れるスノーリゾートになりつつあるが、その先にあるオールシーズンを賑わせるお客の流れをつくるポジションに行きたい。NACと一緒になって夏のスキー場を活用することには、大きな意義がある」と語った。東急グループは、NACが30年間にわたって培ってきたコンテンツ力や修学旅行需要、ニセコ地区ホテルとの協業関係などソフトインフラを取り込んで、営業販促活動を展開していく方針。

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