【新店の研究】「ジョイフルエーケー釧路店」~日本製紙撤退後の新たな賑わいづくりに挑戦~

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 日本製紙釧路工場の西隣にオープンした大型ショッピングセンター「ジョイフルタウン釧路」(釧路市鳥取南4丁目4-12)。その核施設が、「ジョイフルエーケー釧路店」。2025年7月23日のオープンから2ヵ月、開店景気も一段落したため、目下、固定客確保に向けて、札幌圏や十勝圏で蓄積してきた「ジョイフルエーケー」の販促ノウハウを取り入れるなど、「店の使い方に慣れてもらう」(伊藤英将店長)ことに力を入れている。(写真は、「ジョイフルエーケー釧路店」)

 住宅資材卸のキムラ(本社・札幌市東区)のグループ会社、ジョイフルエーケー(同・同)が展開する大型ホームセンター「ジョイフルエーケー」にとって、道東では、「帯広店」(帯広市)に次ぐ店舗。日本製紙釧路工場が操業を停止し、街がどんよりした空気に包まれている中、釧路市民を勇気づけた商業進出だった。釧路は、DCM(本社・東京都品川区)のルーツの1社、ホーマック発祥の地だが、その地への進出について伊藤店長は、「DCMは今や全国企業。北海道のホームセンター『ジョイフルエーケー』として、市民にアピールしたい」と言う。

(写真は、「ペットワールドPROX」コーナー。動物愛護の観点から1日1回、ロールスクリーンが自動的に下りてきて動物たちが休めるようなっている)

「ジョイフルエーケー釧路店」は2棟に分かれ、A棟には、ホームセンター、ペットショップの「ペットワールドPROX」、インテリアセンター、B棟には、プロ向け資材・工具の「BUILD-ON」が入る。「ペットワールドPROX」や「BUILD-ON」は、単独店舗の展開もしているが、「釧路店」は、2ブランドが一体化した店舗となっている。売り場面積は、A棟が約3183坪、B棟が約2486坪。「ジョイフルエーケー」の中では、「大曲店」(北広島市)、「屯田店」(札幌市北区)、「大麻店」(江別市)に次ぐ4番目の規模。

(写真は、業務用食材のコーナー)

 このため、札幌圏の品揃えよりもアイテム数を約2割絞り込み、SKU(在庫保管単位)は約13万になっている。ペット売り場では、魚や爬虫類を販売せず、資材売り場では、農業資材の品揃えを減らしている。一方で、釧路の地域性を考え、水産加工向けの長靴や手袋を強化、包丁類も豊富に揃え、包丁の研ぎサービスも好調た。

(写真は、地元の「福司」も揃えた酒のコーナー)

 酒・米・飲料のコーナーでは、日本酒の品揃えを増やし、地元の酒蔵「福司」の商品も多く並べた。酒の取り扱いは、ジョイフルエーケーの店舗で一番多いという。業務用食材コーナーでは、飲食店向けのほか、キャンプや地域のイベント向けに、冷凍食品を中心に品揃え、紙やプラスチックの飲食容器、販促用の看板や幟も用意した。「日本一入りやすい仏壇売り場」として知られている「メモリアルギャラリー」には、60本以上の仏壇が展示されている。資材センター「BUILD-ON」には、金物、木材、建設資材、工具などが並ぶ。「ガーデンセンター」では、陳列方法に工夫して、ミニジャングル風の売り場を初めて取り入れた。

(写真は、「メモリアルギャラリー」)

 2025年7月23日のオープンから数日間は、予想以上の来店客があった。ただ、同年9月5日の「無印良品」のオープンまで、各商業施設が順番に開店していったため、食品や日用消耗品関係のセールが続き、来店客の多くは、消費意欲を満たしたとみられ、商業施設全体の来店客は、落ち着いた状況になっている。前出の伊藤店長は、2017年3月にオープンした「ジョイフルエーケー大麻店」の副店長として新店の立ち上げを経験しており、「釧路店」を軌道に乗せていく上での経験値は高い。「お客の要望に応じて品揃えを増やし、年月を経るごとに売り上げが伸びていくのが、『ジョイフルエーケー』の特徴」(伊藤店長)。

(写真は、資材センターりの「BUILD-ON」売り場)

 釧路市の商業施設は、釧路町との境界付近に集中しており、東が商業の中心的な役割を果たしている。「ジョイフルエーケー釧路店」などが集積する「ジョイフルタウン釧路」は、市の西に位置しており、現状では不利な立地。「市民の関心が、西に向かうように消費行動を変えていかないといけない。敷地内に釧路初の飲食店舗を誘致したり、各店舗の店長の集まりをつくったりして、誘客に向けた対策を取っていく。また、駐車場を町内会に開放してイベントも誘致したい」と伊藤店長は言う。

 日本製紙の操業停止により、地域の衰退が進むとみられていたが、「ジョイフルタウン釧路」の開業に伴い、昭和橋通沿いには、新たにバス停留所ができ、賑わいも生まれ始めている。「5年後に単年度黒字を達成するとともに、釧路出身者が店長を務められるように、120人いる従業員の人材育成を強化したい」と、伊藤店長は話していた。
※2025年10月12日記事一部修正しました。

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