北海道工業大学の吉岡匠客員教授(マド・プランニング社長、61)と河合洋明教授(59)は、原子力発電所や火力発電所のビッグデータを利用した地震予知のシステムを開発した。地震の前兆として発生する電磁波の影響を送電線が感知して電力の周波数が乱れ、それが発電所の発電機にフィードバックされ元の周波数に戻そうとする動きを利用するもので、既に特許も取得している。3・11前後の発電施設データを解析したところ数日前から発電機の周波数異常が検知されていることから地震と周波数異常の相関は実証されたという。(写真は地震予知システムを開発した道工大の吉岡匠客員教授=右と河合洋明教授)
吉岡客員教授らは、原子力発電所や火力発電所など発電所の心臓部となるタービン発電機の異常を早期に検出してトラブルを未然に防ぐ研究開発を進めてきた。その際に使われているのが、MT(マハラノビス・タグチ)手法。発電機内部のビッグデータをパラメーターで表した状態が正常な状態とどの程度かけ離れているかを示すマハラノビス距離という値を用いることで複雑な発電機システムの状態を数値で“見える化”、異常を判定するもの。
発電機は精密機械のため、微小な周波数の乱れも感知してそれをもとの正常な周波数に戻そうとする。地震の前兆現象とされる電磁波の発生などを送電線が感知すると電力の周波数が変化。それが発電設備にフィードバックされて発電機は乱れた周波数を元に戻す“ジャイロ効果”を引き起こす。
吉岡客員教授と河合教授は、このジャイロ効果を増幅させることで地震予知センサーの役割を果たせるようなシステムを開発した。
実際に地震が起きた際の発電機データを解析したところ、横揺れ(S波)の到達前に発電機が異常を示していることも分かった。3・11の発生前のデータでも同様の異常値が検出されている。昨年8月には、発電設備が地震予知に利用できるシステムの開発で国内特許を取得した。
これによって日本中に張り巡らされた送電線が地震予知に利用できる道が開けることになる。ただ、風力や太陽光といった再生エネルギーを利用した発電設備では周波数を精緻に制御していないため地震予知には使えない可能性があるというが、原子力や火力を利用した大規模で周波数をきっちりコントロールした発電機にはすべて対応できるとしている。
吉岡客員教授は、「マグニチュード5以上の地震には再現性があることが検証された。地震の位置や大きさについて予測する計算式も完成したため現在世界特許を出願中。将来的には、このシステムを利用して地震発生地域を予測して企業や個人へリアルタイムで情報を提供できるようにしたい」と語っている。
なお、今回の地震予知システムの特許詳細は、http://www.google.com/patents/WO2011126110A1?cl=ja