道警元総務部長の佐々木友善氏(69)は15日、道警裏金に関する単行本を巡る民事訴訟で道新記者が証言した内容が偽証だったとして札幌検察審査会に審査の申し立てを行った。民事訴訟では原告の佐々木氏が勝訴しているが、被告側証人として出廷した道新記者の証言が虚偽に当たるとしてこれまで2度札幌地検に告発。いずれも不受理、不起訴だった。今回、佐々木氏は大量の証拠書類を添えて札幌検察審査会に審査を申し立てたもので、同審査会では年度内にも結論を出す見込み。(写真は札幌検察審査会に審査申し立てを行った佐々木友善氏)
佐々木氏が、道警の報償費を利用した裏金作りに関する書籍で名誉を毀損されたとして、北海道新聞社と同社記者2人、 本を出版した講談社、旬報社に損害賠償などを求めて提訴したのは2006年5月。道新取材班の著作による「追及・北海道警『裏金』疑惑」(講談社文庫)と同班らの共著「警察幹部を 逮捕せよ!泥沼の裏金作り」(旬報社)の2冊の中にある佐々木氏の裏金対応に関する4カ所の記述部分が名誉毀損に当たるとしたもので、道新と書籍を書いた道新記者の高田昌幸氏(すでに退社)、佐藤一氏の2人、出版社らに慰謝料600万円と本の回収、道新への謝罪広告の掲載を求めていた。
提訴から3年後の09年4月に札幌地裁(竹田光広裁判長)1審判決があり、記述の一部を「真実と認めるに足りない」として、全被告に計72万 円の賠償を命じ、本の回収や謝罪広告については認めなかった。判決では原告・被告の訴訟費用について原告が9割を負担するものとした。
その後双方が控訴。10年10月26日の控訴審(井上哲男裁判長)判決は、一審判決通り原告勝訴となったがまたしても原告、被告双方が上告。最高裁は11年6月16日付で上告棄却して道新敗訴、佐々木氏の勝訴が確定した。
この裁判の被告側証人として出廷した道新記者の証言が虚偽だったとして佐々木氏は10年12月8日にこの道新記者を札幌地検に偽証罪で告発、しかし11年1月24日に同地検は不受理とした。佐々木氏は資料を追加して同年5月23日に2回目の告発を行い同地検は同年11月9日に受理。地検は捜査を行ったものの「偽証はあったが故意はなかった」として嫌疑不十分で12年7月27日に不起訴処分を下した。
その後、佐々木氏は自力で民事訴訟での裁判記録や陳述内容、被告側主張、当時の芦刈道警本部長の証言内容について精査するとともに多人数に聞き取りをして資料を収集して分析。今回キャリーバックに満杯になるほどの資料を添えて札幌検察審査会に審査の申し立てを行った。
検察審査会は民間人11人で構成され、8人以上が起訴相当と認めれば地検に戻されて地検は再捜査を行うことになる。
佐々木氏は検察審査会への申し立てについて、「偽証は裁判の判決を左右する重大な犯罪。検察の不起訴で一般の人なら泣き寝入りして犯罪が闇に葬られていることもある。私は42年間にわたり捜査を指揮してきた経験があり事件のツボも心得ている。私が頑張ることで社会正義の実現に貢献していきたい」と語っている。