豊富温泉の天然ガスからDMR法で水素とカーボンナノチューブ、実証プラント竣工式

経済総合

 エア・ウォーター(本社・大阪市中央区)と戸田工業(同・広島市南区)が、天塩郡豊富町の豊富温泉で建設を進めていた天然ガスを利用したDMR法(ダイレクト・メタン・リフォーミング)による国内初の水素製造実証プラントが完成、2025年9月18日、現地で竣工式が行われた。(写真は、天然ガス利用のDMR法水素製造実証プラントの竣工式)

 このプラント建設は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に採択された「北海道豊富町未利用天然ガスを活用した地域CO2フリー水素サプライチェーンの構築事業」の一環として建設された。豊富温泉地区で自噴する温泉付随ガスを原料に、戸田工業が開発した鉄系触媒を使って、CO2を発生させずに水素とカーボンナノチューブ(CNT)を生産するもので、CO2を発生しないためカーボンニュートラルとエネルギーの地産地消に繋がる。

 プラントは、豊富温泉地区の豊富温泉スキー場敷地内に建設され、鉄骨造2階建て、延べ床面積約630㎡。エア・ウォーターの水素精製・高純度化技術と戸田工業の酸化鉄触媒を利用した、DMR反応炉を組み合わせた連続プラントで、総事業費は約15億円。1時間当たり1000㎥の天然ガスを原料に、約700℃の触媒反応によって、1時間当たり40㎥の水素と15㎏のCNTを生産できる。

(写真は、プラントの心臓部、DMR反応炉)

 プラント前で行われた竣工式で、エア・ウォーター北海道(本社・札幌市中央区)の庫元達也社長は、「温泉随伴ガスという地産のガスを活用、CO2を排出することなく水素を生産して、地域で活用する新たなエネルギーの地産地消サプライチェーン創造を目に見える形にした。次年度以降の継続的な運営と地域貢献に向けた体制構築を推進したい」と挨拶。戸田工業の友川淳取締役常務執行役員経営企画室長は、「メタンを水素として資源化、エネルギーの地産地消を実現する取り組みで、豊富町から世界へ発信される誇り高きプロジェクトになると確信している」とした。

 来賓の豊富町の河田誠一町長は、「最北の温泉郷から最先端の技術を広め、脱炭素社会に貢献したい。エア・ウォーター、戸田工業、豊富町がワンチームになって頑張っていく」と話した。また、宗谷総合振興局の西岡孝一郎局長は、「ゼロカーボン北海道の実現に向けた大きな後押しとなり、心強い。道は、エネルギーの地産地消の発展を進め、環境と経済社会が好循環する持続可能で活力ある地域づくりに取り組んでいく」と語った。

 このプロジェクトの責任者であるエア・ウォーターグリーンイノベーション開発センター(大阪市中央区)の田中真子センター長は、「DMRは国内初の技術であり、国産の未利用天然ガスを原料にクリーンな水素をつくるという、日本にとって新しい取り組み。重要なカーボンニュートラルの一歩であり、地域でつくって地域で使うエネルギーの地産地消に繋がる。CNTが、高い価格で販売できれば、水素を相対的に安く仕上げられるのでポテンシャルは大きい」と話していた。

 実証実験は3ヵ月間行い、生産した水素は、雪印メグミルク幌延工場で利用、CNTは、リチウムイオン電池の導電材料などに販路を開拓する。豊富温泉の天然ガスは1日約1万㎥発生し、約3000㎥は、温泉施設の熱源として利用され、一部は、セイコーマート豊富工場向けにも使われているが、半分以上は未利用となっている。
(写真は、豊富町産水素の荷姿)

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