札幌中島公園「ライラックスクエア」、国内最強BCPの施設内部を公開

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 アクサ生命保険(本社・東京都港区、札幌本社・札幌市中央区)は、同社グループが総額数百億円のグリーン投資として進めてきたオフィス・ホテル・商業の複合ビル「ライラックスクエア」(同市同区南10条西1丁目)が竣工したことに伴い、2025年7月25日、同ビルのBCP(事業継続計画)を支える施設を報道向けに公開した。
(写真は、2025年10月にオープンする「ライラックスクエア」)

 中島公園そばのヤマハ跡地に建設された「ライラックスクエア」は、大規模災害が起きてもオフィス機能を止めない、分散型本社を志向するアクサ生命グループが、2014年に設立した札幌本社の本拠として建設した。竹中工務店(本社・大阪市中央区)が設計施工を手掛けた地上14階建て、延べ床面積5万2776㎡で、1~3階は、エントランスホールとフードコート、貸会議室、4~8階は、オフィスエリア、9~14階は、札幌初のラグジュアリーホテル「インターコンチネンタルホテル」が入る。オフィスエリアには、アクサ生命札幌本社が入るほか、テナントとしてグローバル企業の本社機能やバックオフィス機能、IT企業やコールセンター、スタートアップ、ベンチャーを誘致する。

(写真は、屋上に完備されたヘリポート)

 同ビルの特徴は、国内最強とされるBCP機能。高さ60mの屋上には、国土交通省の許可を得た場外離発着陸場が完備され、災害時には警察や消防、ドクターヘリの活動が可能となっている。敷地内には、井戸小屋と井水処理室が設置されている。地下90mから汲み上げられる伏流水は、井水処理設備で水質を確保した上で、建物全体の飲料水やトイレの洗浄水として利用できる。井戸小屋は2基あって、1日計4tの井水を汲み上げることができる。

(写真は、非常用発電機)

 2階から2層吹き抜け構造になっている機械室は、非常用発電機室とCGS(コージェネレーション)室に分かれている。明電舎(本社・東京都品川区)製の非常用発電機(発電量1400kW)は、災害時に都市ガスを燃料に建物全体の8割をカバーできる電力を14日間連続で供給できる。都市ガスが寸断されても、敷地内のA重油で同じく14日間の連続運転が可能。理論上は14日以上も可能だが、14日で設備点検が必要になるため、この期間を区切りにしている。CGC室には、ヤンマーホールディングス(本社・大阪市北区)のコージェネレーションシステム(発電量370kW)が設置され、平常時に発電の際の排熱を空調や給湯、融雪に利用して省エネ化を図る。また、災害時には、非常用電源として利用することも可能となっている。

(写真は、免震ピット内の免震装置)
(写真は、一般も利用できる2階のオープンスペース)
(写真は、2階のテラス)

 建物地下の免震ピット(免震装置を設置するために設けられた地下空間)には、建物の鉄骨を支える高さ50cmの円形をした天然ゴム製免震装置3種類75基が設置されている。震度6強の揺れを減衰する機能や揺れを復元させる機能などがあり、「免震上級」の基準をクリアしている。札幌市から容積率緩和(151・8%)を受けたため、1階と2階は、近隣市民も集える屋内広場とカウンター、テーブルを設置した公共空間となっている。席ごとにコンセントも設置、市民のサードプレイスとしても利用可能となっている。また、豊平川側の2階と3階には、ウッドデッキのテラスも設けられ、2階のテラスは、一般利用も可能。災害時には、近隣住民の滞留場所としても開放する。

(写真は、集成材を使った大階段)
(写真は、札幌軟石を使った意匠壁)

 1階のエントランス正面には、集成材を利用した大階段が備えられ、災害時にベンチとして利用できる。また、左側には、札幌軟石を利用した3パターンの意匠的な石材パネル(300㎜×900㎜)を組み合わせた壁として、ところどころには、本物の植物をアクセント的に配置している。「ライラックスクエア」を管理運営するアクサ・リアル・エステート・インベストメント・マネジャーズ・ジャパン(本社・東京都港区)の早藤嘉彦社長は、「電気、水は14日間止まらないコンセプトで、安全・安心に働ける環境を実現した複合ビルとなっている。市民の方々も、いつでも気軽にビルに入っていただき、食事や眺めを楽しんだり、休憩したりするスペースに使っていただき、街のランドマークを目指したい」と話していた。

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