マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が、大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも、数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の2025年16回目は、豊平区平岸2条14丁目の「今崎メディカルビル」。(写真は、解体工事が始まっている「今崎メディカルビル」)
白石・藻岩通の長い下り坂を走り、地下鉄南平岸駅の高架を通り過ぎると、平岸街道と交わる。昼夜を問わず、交通量の多いこの交差点の南西角に建っているのが、「今崎メディカルビル」。黄土色をした、タイル張りの外観が特徴だったこのビルが竣工したのは、1985年10月。鉄骨鉄筋コンクリート造4階建て、延べ床面積約465坪(1535・47㎡)の建物内には、薬局やクリニックが入り、独特の存在感を放っていた。敷地面積は約307坪(1014・60㎡)。
ここには最初、今崎薬局が入っていたが、調剤薬局の台頭と再編の渦に巻き込まれ、土地建物を所有していた今崎薬局とその親族から、所有権は二転三転していった。一時は、「北交ハイヤー」で知られる北海道交通(本社・札幌市豊平区)が所有していたこともある。
その後、2020年5月に阪神調剤グループのI&H(同・兵庫県芦屋市)に所有権が移り、2025年3月、I&Hは、ドラッグストア業界3位のスギ薬局(同・愛知県安城市)に吸収合併され、所有権は、スギ薬局に移った。
「今崎メディカルビル」に入っていたI&Hの「みらくる薬局」やクリニックは、2年ほど前から順次移転、2025年5月頃には、テナントが全退去した。これを受けて、解体工事が、同年6月9日から始まった。注文者は、スギ薬局、解体業者は双葉工業(札幌市東区)、工期は同年12月31日まで。「今崎メディカルビル」は、ちょうど40年間にわたって街角の景観を形づくってきた。解体後には、どんな建物が、街角に彩りを添えるだろうか。