請求書の発行や受発注など、企業間取り引きのプラットフォームを展開するインフォマート(本社・東京都港区)。2024年3月に札幌営業所を開設、道内の飲食業やホテル・旅館業への導入を積極的に働きかけている。今回、インフォマートの「BtoBプラットフォーム」を導入している万世閣(同・虻田郡洞爺湖町)・濱野清正社長と、インフォマート公認パートナー企業のシステム会社、サイトシーテック(同・札幌市中央区)・濱野将豊社長、インフォマート・中島健社長の3者が集まり、ホテル・旅館業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化による効果と将来展望を語り合った。(写真左から、万世閣・濱野清正社長、インフォマート・中島健社長、サイトシーテック・濱野将豊社長。2024年11月15日、定山渓万世閣ホテルミリオーネにて収録)
ーーホテル・旅館業や飲食業が直面している課題は、何でしょうか。
将豊 私は、9年前までホテル・旅館に勤めていましたが、以前から、この業界は、生産性の低い業界と言われてきました。現在も大きく変わっておらず、人材がますます不足する中で、どう人材を確保し、待遇改善を進めていくかが大きな課題です。そのためにはDX化など、生産性を向上させる取り組みを進めていかなければならないでしょう。
ーー現場での課題を、どう実感されていますか。
清正 弊社は、「万世閣」の「万」にかけて、「万」の楽しみをお客さまに提供する旅館になりたいと思っています。館では、パンやコーヒーの提供、サウナや露天風呂、高級な部屋など、さまざまなコンテンツがありますが、それぞれのコンテンツに対して、「番長」のような長けた人をつくっていかなければならない。しかし、「番長」が、それぞれ勝手にさまざまなことをやりだすと、収拾がつかなくなります。
横串を通すような、規律が必要で、それがDX化だと思っています。弊社では、DX化のために導入したインフォマートの「BtoBプラットフォーム」よって、魚1匹からでも、いくらで仕入れているかが、即座に分かるようになりました。情報の透明化が進むことで、館内での信頼関係が生まれてきます。この信頼関係をつくらないと、「番長」の良さが互いに分かりません。そういったことを確固たるものにしていくためにも、インフォマートのようなシステムが、非常に有効だと思っています。
ーーDX化によって、どんなことができますか。
中島 人手不足は、全国どこでも同じですが、北海道の温泉街では特に人手不足が顕著です。それに加えて、温泉街のホテル・旅館には、札幌以上に情緒的価値が要求されます。つまり、温泉に入って癒されるとか、客室がゆったりとして気持ちが良いとか、思い出になるような要素が必要です。人手不足への対応と情緒的価値を高める取り組みには、DX化が不可欠。DXで、できることはDXに任せ、情緒的価値の創出に人材を振り向けるべきです。
「BtoBプラットフォーム」を導入して、紙ベースで行ってきたことをデジタルに変えるだけで、受発注や請求書発行などを正確に、スピーディーに可視化できるメリットがあります。リアルタイムで経費の流れも分かります。それだけにとどまらず、利用者がより発展していくためのデータ活用もできます。例えば、「万世閣」さんが展開している3つの館で、同じ食材を仕入れても、館によって値段が違うことなどが即座に分かります。
データをうまく活用することによって、より安価で質の高い仕入れルートを開拓していくことにもつながります。そのような使い方をしているユーザーは、まだ一部でしかありませんが、まさにそういう使い方こそが、DXの真髄ではないかと思っています。意外ですが、ほとんどのお客さまは、最初にそうした効果を狙って導入したわけではありません。使っていくうちに、プラスαの使い方に気づくのです。データ活用というと、AIを使って分析したりすることを考えがちですが、データをテキストファイルやエクセルで可視化するだけでも、いろいろな活用方法が見いだせます。