【北のミュージアム散歩】第94回 だて歴史文化ミュージーアム ~伊達をつくった文化~

連載 北のミュージアム散歩

「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
第94回は、伊達市の「だて歴史文化ミュージーアム」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第94回 だて歴史文化ミュージーアム
-伊達をつくった文化-

 JR室蘭本線伊達紋別駅に降り立つと、噴火湾の潮の香りが漂っている。
 伊達市街の歴史街道には江戸時代の武家の屋敷を感じさせる、瓦屋根の建物が並んでいる。国道37号に面して「総合公園だて歴史の杜」が広がり、その一角に2019(令和元)年に新しく建て替えられた「だて歴史文化ミュージーアム」がある。鉄筋コンクリート二階建ての本館と体験学習館がある。このミュージーアムは伊達市の生い立ちを知ると共に、伊達の文化の多様性や多文化共生社会へ向けた取り組みについて考える博物館を目指している。

ミュージアム本館正面

 本館の二階スペースが歴史文化のコーナだ。入り口からすぐに、およそ一万年以上も続いた縄文文化の時代の展示が始まる。1948(昭和23)年に伊達の高校の教師が縄文人の生活の跡が見られる、北小金貝塚を発見した。北海道・北東北の縄文遺跡群の一つとして2021(令和3)年にユネスコ世界文化遺産に登録された、北小金貝塚遺跡群がパネルの写真と共に紹介されている。重要文化財に指定されている鹿角製の銛(モリ)には、美しい模様が彫られている。彫刻を施した石器など縄文時代の道具類や、貝殻細工の首飾りや耳飾りなど、装身具類が並んでいる。
 続いて、アイヌ文化のコーナーではアイヌの人々の衣服が飾られていて、アイヌ文様についての紹介が詳しくされている。文様が付いた石製品や、熊の骨で作ったスプーンなどが並んでいる。

館内展示風景

 伊達市は戊辰戦争で敗者となった仙台藩亘理伊達家が開拓した土地である。1870(明治3)年、新天地を北海道に求めて伊達家総勢2700人が第一陣として移住してきた。伊達家主従の一行を蝦夷三官寺として古くから開けていた有珠の善光寺の僧侶たちは、尊敬の心で暖かく迎え入れて交流が始まった。円空和尚が彫ったという木彫りの仏像が、ガラスケースに収められている。

館内展示風景

 武士たちの慣れぬ開拓の仕事を、アイヌの人々が助けてくれた。アイヌの知恵と技術を学び、開墾は進んでいった。開拓の苦難は、ビデオテープに纏められて放映されている。伊達家当主伊達邦成が開拓の先頭に立ち、義母貞操院保子は手作りの菓子をつくり、家臣やその家族を励まして歩く感動的な姿が画面に写し出されている。

開拓の様子を示す動画が放映されている

 武士たちの使っていた刀や鉄砲、漆塗りの道具類や金箔の装身具などの展示は、伊達の地に武家文化が流入されて、この地に日本の美が伝わったことを示している。
 今日豊かに発展した伊達の地は、「縄文人の文化」「アイヌの文化」、そして「武家の文化」の三者が融合して築かれたことを、ミュージーアムは物語っている。
 特別展示室には伊達市が収蔵する文化財などを季節に合わせたテーマで、雛人形や端午の節句の甲冑類や刀剣などの企画展を年に数回行っている。
 体験学習館の藍工房では、北海道で唯一藍の生産をおこなっている伊達市の、藍染体験ができ、刀鍛冶工房では刀剣制作や作品などが見学できる。

利用案内
住  所:伊達市梅本町57番地1
電話番号:0142-25-1056
開館時間:9:00―17:00  
入 館 料:一般大学高校生/300円 小学生中学生/200円 未就学児/無料
休 館 日:月曜日(祭日の場合は翌日) 年末年始  12月~2月は休館
駐 車 場:道の駅駐車場
アクセス:JR伊達紋別駅より徒歩25分 道南バス10分、歴史館前下車 
H   P:https//date-museum.jp

付近の見どころ
 「総合公園だて歴史の杜」には、大手門や石垣に囲まれた広い日本庭園があり四季折々の花が咲く。伊達邦成が男爵の爵位を受けた記念に建てられた「迎賓館」や、北海道最古の建築様式を取り入れた開拓農家「旧三戸部家住宅」もある。

文・写真:山崎 由紀子

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