「閉じる店あれば、開く店あり」――流通小売業の出店、閉店は地域の実情を写し出す鏡のような現象だが、札幌市内で6月30日をもって閉店する食品スーパーと7月の初めに出店するドラッグストアがある。閉店するのは北区新川地区の「JOY新川店」(北28条西14丁目)、開店するのは中央区山鼻地区の「ツルハ南8条店」(南8条西7丁目)。2つの店舗は離れているとはいえ同時期に『終末』と『誕生』を迎え、流通小売業の生生流転を象徴的に表しているようだ。(写真左は閉店する「JOY新川店」、写真右は開店する「ツルハ南8条店」)
6月30日午後6時で閉店する「JOY新川店」は、イオングループのマックスバリュ北海道(本社・札幌市)が運営している。この店がオープンしたのは、1993年10月。今年でちょうど満20年を迎える。当時は、住友石炭鉱業流通事業部が展開、その後、同事業部の分離独立などを経てマックスバリュ北海道と合併するなど店舗の運営主体もこの20年間で二転三転してきた。
当時は住宅街である新川地区の買い物需要を満たす唯一の店舗だったが、この10年間だけを見ても「スーパーアークス北24条店」(ラルズが運営)、「ダイイチ八軒店」(ダイイチが運営)、「JR生鮮市場新川店」(北海道ジェイ・アール・フレッシュネス・リテールが運営)など1㌔圏内に競合店が出店、採算は悪化する一方だった。
そして迎える閉店。食品スーパーの閉店はヒトの最期にも似て寂寥感に包まれる。店内に新たな商品の補充がなく棚には空白が目立ち体力が奪われていくように見える。血液の循環に例えられそうな買い物客もまばらで弱っていくヒトの肉体のように店舗はすーっと活気を失っていく。
一方、開店はヒトの誕生と同じく『ハレ』の感情を揺する。「ツルハ南8条店」は外観が整い店舗前の駐車場も真新しいアスファルトが敷き詰められた。アスファルトに描かれた駐車スペースを区切る黄色いラインがくっきり浮き出て、やがて来る『誕生』の喧騒を静かに待っているようだ。
ツルハにとって、この店舗は中央区で11店舗目。ドラックストア業界ではドミナント(地域集中)出店で地域シェアを支配的に高めることが勝ち抜く鍵で、新店舗からわずかに300m足らずの距離には既存の「南7条店」(南7条西8丁目)がある。
「閉店」と「開店」は、企業と地域の事情が絡み合った結果として起きてくる。日常生活と密着している食品スーパーやドラッグストアの消長は、地域住民の食や暮らしの変化を促しながら絶えず繰り返されていく。
6月で消える「JOY新川店」と7月に生まれる「ツルハ南8条店」は、それを象徴的に物語っているようだ。