【北のミュージアム散歩】第89回 五稜郭タワー~展望台で五稜郭の景色と歴史を知る~

連載 北のミュージアム散歩

 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第89回は、函館市の「五稜郭タワー」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第89回 五稜郭タワー
-展望台で五稜郭の景色と歴史を知る-


五稜郭タワー入口

 函館の特別史跡五稜郭に隣接する五稜郭タワーは、五稜郭築城100周年を記念して、1964年(昭和39年)12月に完成した。建物の全長60m、展望台の高さ45mであった。長年にわたって函館の観光名所だったが、施設の老朽化により2006年(平成18年)4月、元の位置から30m離れた場所に新タワーを建設し、リニューアルオープンした。旧タワー跡地は、アトリウムと呼ばれる全天候型ガラス張り広場となった。新タワー展望台は二重構造になり、全長は98m。旧タワーは、展望台から五稜郭の星型がすべて見れないと観光客から不評だったが、塔が高くなったことで、五稜郭の全景を見渡せるようになった。さらに展望台に展示スペースを設け、「五稜郭歴史回廊」として五稜郭に関する歴史を展示している。ただし、歴史資料は直射日光による急速な劣化を伴うため、実物の展示は無い。

 地上1階の円筒型タワーチケットカウンターの壁には、幕末の函館に関する錦絵が描かれている。壁の前面は『箱館大戦争之図』、『松前決戦之図』、『五稜郭奮戦図』など、後面は『箱館真景』、『戊辰五月東軍之諸将於五稜郭酒宴之図』、『五稜郭之降伏』などである。カウンターの近くには、戦艦開陽と五稜郭築造当時の箱館の模型で、資料を基に精巧に再現した。そばに、榎本武揚と武田斐三郎の立像がある。


タワーチケットカウンター:全面の壁が錦絵になっている

 展望台に行くには、チケットカウンターで展望チケットを購入。エレベーターに乗って約30秒ほどで、展望台2階(高さ90m)に到着する。展望台1階(高さ86m)には止まらない。

 展望台2階は、360度の回廊型の造りになっている。展望台からは、箱館奉行所、函館市街、函館山、駒ヶ岳、津軽海峡などの眺めを楽しめる。天気が良ければ、下北半島や津軽半島を見渡すこともできる。


展望台2階の展示物1:五稜郭歴史回廊

 エレベーターのすぐそばに、250分の1サイズの五稜郭復元模型がある。すぐ真向かいに、グラフィック展示『五稜郭物語』がある。幕末のペリー来航から箱館戦争終結とその後の五稜郭についての18年間の歴史を、年代順に16項目に分け、さらに情景模型(ジオラマ)及び四コマ漫画で、五稜郭の歴史を解りやすく解説する。主な内容は、ペリーの黒船来航、日米和親条約締結、歴代箱館奉行の変遷、箱館諸術調所の開設、五稜郭築造、松前攻略から始まる箱館戦争、蝦夷全島仮政権、高松稜雲による赤十字の活動、五稜郭の建物解体などである。

 階段近くに、五稜郭のタワーと星形の模型がある。この2つの模型は視覚障害者用で、直接触れて体感できる。さらに、土方歳三のブロンズ座像もある。フロックコートにブーツ、腰に刀をさした、洋装で土方が椅子に座っている像である。函館出身の彫刻家小寺眞知子が2年かけて制作した。


展望台2階の展示物2:土方歳三座像

 展望台1階に行くには、階段で移動する。1階は世界の稜堡式城郭を紹介。五稜郭のルーツは、16世紀のルネサンス期の欧州に遡る。五稜郭と同じ技術で造られ、現在も世界各地に存在している要塞や城郭都市を、グラフィックパネルとタッチモニターで紹介している。1階の床には、シースルーフロアがある。これは、床の一部が透明の強化ガラスになっており、地上86mの世界を体感できるようになっている。

 地上1階に戻るには、展望台1階からのエレベーターを利用して地上2階まで下りる。(地上1階までの利用はできない)ここから階段を利用して、1階まで移動となる。階段の途中に、植木蒼悦ギャラリーがある。植木は函館出身の画家で、主に河童の絵を残した。作家の小林多喜二とも親交があった。

 地上1階の隣にあるアトリウムは、広々とした休息の場所であり、様々なイベントが開催される。この場所にも小寺制作の「五稜郭に立つ土方歳三像」というブロンズ立像が2門の大砲(仏式四斤山砲と30ポンド短カノン砲)の模型とともにある。

 1階の売店には、土方に関するグッズが数多く販売されている。道内で土方は、異彩を放つ人物としての評価が高く、令和の現在も様々な人々から慕われている。

利用案内
住  所:〒040-0001 函館市五稜郭町43-9
電話番号:0138-51-4785
開館時間:9:00~18:00(展望チケット販売終了時間は17:50)
休 館 日:なし
入 館 料:大人 1000円(30名以上の団体は900円、障害者は500円)
     中高生 750円(30名以上の団体は680円、障害者は380円)
     小学生 500円(30名以上の団体は450円、障害者は250円)
     小学生未満 無料
     障害者手帳を提示すると障害者料金になる。(本人1名につき、付き添い1名適用)
アクセス:函館市電「五稜郭公園前」下車、徒歩約10分
     函館バス「五稜郭」下車、徒歩約10分
     函館バス「五稜郭公園入口」下車、徒歩約5分
     函館バス「五稜郭タワー前」下車、徒歩約1分

付近の見どころ
北海道立函館美術館
 1986年(昭和61年)に開館。「道内ゆかりの美術」、「書と東洋美術」、「文字と記号に関わる現代美術」をテーマに近代以降の作品を収集・展示。書家の金子鷗亭の作品を紹介する「鷗亭記念室」がある。

文・写真:大渕 基樹

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