第46回 野幌屯田兵第二中隊本部 ~往時を偲ぶ兵村の面影~

連載 北のミュージアム散歩

 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
第46回は、江別市の「野幌屯田兵第二中隊本部」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第46回 野幌屯田兵第二中隊本部 ~往時を偲ぶ兵村の面影~

 


屯田兵第二大隊第二中隊本部

 野幌兵村の最大の特徴は建造物のみならず、周囲環境も含め広域保存されている点である。練兵所跡、兵士らの暮らしに密着する領域(共有地の一部)が子孫達の結束の元、売買されることなく、昭和41年(開村81年目)に江別市に寄贈されるまで公有財産として守り継がれた。江別市ではその意志を踏まえ、景観を大幅に損なう事なく、中隊本部のある共有地周辺を木々に囲まれた緑豊かな空間として保持。野幌グリーンモールといわれるベルト地帯として残している。じっくりと歴史考察できる醍醐味を堪能できる。


明治24年3月28日_上等兵以上の幹部

 野幌屯田兵第二中隊本部までの行程は、札幌駅から電車で25分。野幌駅から徒歩15分。その途上、関連史跡である『開村記念碑』、『練兵場跡の史跡標柱(現在の江別第二中学校の位置)』を確認できる。

建物は野幌に屯田兵が入地する前の年の明治17年(1884)に建てられ、当時から殆ど手付かずのまま保存されている。道内には全37兵村が存在したが、中隊本部建造物が残るのは野幌(江別市)、新琴似(札幌市)の2ヶ所のみ。北海道有形文化財に指定されている。


下士集合室の展示物と中隊長室

 この建物は江別市郷土資料館分館の役目も兼ねている。一階の各部屋は、中隊長室、下士事務室、同集合室、当直室、軍医室、小使室などからなる。各部屋のスペースを活用して、当時の関連資料、ジオラマなどの展示物が揃い、野幌兵村のみならず、江別市に存在した他2つの兵村(江別、篠津)の配置図や人物名もわかる。

野幌兵村は明治18年及び翌19年に入地した計225戸で、鹿児島、熊本、佐賀、山口、広島、鳥取及び石川の7県から入った。この中に、例えば西南の役に参加した人物も存在していたなど、興味深い話も多い。
洋風二階建の建物は建築面積_150.72㎡。屋根は切妻造、『葺き』は大正2年改築時の亜鉛板だが、開村時は柾葺。二階は格納庫。銃他軍用品が収納されていた。建築様式はアメリカ式のバルーンフレーム。屋内に柱が一本も露出していないのが特徴。構造的魅力は多数ある。例としてドア、敷居枠などには当時の日本技術には存在しないネジ釘、L字金具などが巧みに用いられ、実に精巧且つ頑丈だ。


屯田兵人形【天徳寺蔵】

 展示物の中、一つ異色のコーナーがある。32体の屯田兵の木像が並ぶ。日露戦争戦死者である。ここにあるのは全て小型レプリカ。本体は天徳寺(野幌)にある。明治37(1904)~38年日露戦争の際、江別兵村及び野幌兵村から計71名が召集され、同39年3月凱旋するが、32名戦死。遺族が若い兵の霊を悼み、からくり人形師「玉屋庄兵衛」に依頼して本人そっくりの木像を製作した。皆の写真、または特徴を聞き取りの上作られたものであり、体形、顔が皆異なる。

利用案内
住   所:江別市野幌代々木町38番地の11(TEL.011-385-4766)
開 館 日:4月29日~11月3日の期間中の(土,日,祝)日のみ開館
9:30~17時(入館:16:30頃迄)
入 館 料:大人_100円、小中学生_50円
交通アクセス:JR野幌駅より徒歩25分

付近の見どころ:
野幌屯田兵屋
中隊本部から15分ほど歩くと、湯川公園の西一角に、広島県から入地した屯田兵_湯川千代吉氏の兵屋がある。樹木が生い茂る広大な空間に、ひっそりと建つ古い兵屋の景観が歴史を伝える。
一般公開日:5月~9月の第4土曜日:9:30~16:00

文・写真 松村 ゆかり

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