「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
第40回は、苫小牧市の「苫小牧市科学センター」です。ぜひご愛読ください。
(合田一道)
■第40回 苫小牧市科学センター ~探究と好奇心に導かれて~
苫小牧市科学センター 外観
苫小牧市は道内屈指の臨海・臨空工業地帯であり、交通手段も良く、北海道における産業の拠点地でもある。
街の中心部に天文学系の苫小牧市科学センターがある。JR苫小牧駅から徒歩20分ほどでたどり着く。航空や宇宙を中心とした展示物が並んでいる。
一階の展示室を訪れると壁側に大きな万華鏡と、こころリングが設置されている。その先にグライダーの実物がある。自然の力(上昇気流)を利用して旋回する滑空機で、エンジン無しで飛ぶことができる。もともとは日本大学工学部滑空研究会のOBが所有していたのだが、子供たちの教育に役立てようと、この施設に寄贈された。
隣には、北海道で初めて導入された防災救急ヘリコプター「はまなす」が展示されている。奥尻地震や豊浜トンネル崩落事故における救急活動時の写真もあり、22年間に及ぶ活動の歴史を知ることができる。
同じ場所に、ダットサン・ベビーがある。この自動車は子供が運転できる遊具で、昭和38年頃に神奈川県の遊園地【国立子供の国】で製作された。
はまなす号
二階では、宇宙開発の歴史を紹介する宇宙コーナーがある。スペースシャトルの模型や軌道表示装置(位置、軌道を知る超小型コンピュータ)が見られる。この装置は、スペースシャトル『コロンビア』で実用されたものである。また、鏡の部屋、地震や光と色の実験装置、無限トンネルに木工パネルなどの体験場があり、子供が遊びながら科学に触れられる。それに、プラネタリウムは84席あり、ゆったりと観賞できる。
プラネタリウム室の前方に、ナミビア砂漠の奥地から運ばれてきたギベオン隕石が展示されていた。成分は鉄とニッケルの鉄隕石。職員の話によると、市が専門の業者から買い取ったものという。
宇宙コーナーから続く通路の先に、おもしろ科学図書コーナー室がある。宇宙ロケット開発の歴史に関する絵本や写真集があり、ビデオ観賞もできる。
宇宙コーナー
その奥にミール展示館がある。
ミールは長期滞在型宇宙ステーションで、ロシア語で平和を意味する。2機つくられ、その1つである予備機のミールが観覧できる。模型ではなく本物であることに驚く。ミールの役割には、天体や宇宙の観測、植物栽培に医薬の開発と物理実験がある。さらに、宇宙飛行士が長期滞在するための健康管理や運動プログラムの開発も行われ、その技術が現在も活用されているそうだ。
ミール展示館
船内に入ると、操縦室や冷蔵庫、洗面装置に無重力対応トイレ、降下式シャワー、トレーニングマシンとランニングマシンがある。全体的に狭い船内だ。なかでもプライベートルーム(宇宙飛行士の個室)では、睡眠時に移動しないようカユータと呼ばれる、身体を固定するベッドがある。その様子から窮屈な環境に思えたが、無重力状態ではどのような姿勢でも違和感はないらしい。とはいえ、長期間も所狭い居住空間に耐えられる宇宙飛行士の精神力は強靭に思える。要望があれば指導員による解説も受けられ、知識が深まる。
宇宙を学ぶと好奇心が湧いてくる。
この施設では、小中学生向け教室や出前講座に科学センター学習の取り組みも行っている。子供が楽しめる。大人も学べる。天文の魅力を伝える施設だ。
利用案内
所在地:苫小牧市旭町3丁目1番12号
最寄駅:JR苫小牧駅から徒歩20分・車5分 市民会館付近
開 館:午前9:30分~午後5:00分
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は次の平日) 年末年始
入館料:無料(プラネタリウム見学も無料)
TEL:0144-33-9158
駐車場(無料)自家用車20台
付近の見どころ:
出光カルチャーパーク
多目的広場や池、人工滝、遊水路や彫刻の道などが配置された市民のふれあいとやすらぎの場。美術博物館や総合体育館もある。苫小牧駅から徒歩15分ほど。
文・写真 雪乃 林太郎