第53回 野幌森林公園 自然ふれあい交流館 ―感性を刺激する森の楽園―

連載 北のミュージアム散歩

 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第53回は、江別市の「自然ふれあい交流館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第53回 野幌森林公園 自然ふれあい交流館
―感性を刺激する森の楽園―


野幌森林公園自然ふれあい交流館(外観)

 道立自然公園に指定されている野幌森林公園は2,053haの面積があり、大部分を国有林が占めている。この園内に「自然ふれあい交流館」がある。主に自然に関する情報を紹介している。また公園を利用する際の休憩の場としても活用されている。
 屋根は木の葉を繋げた形をしており、室内から天井を見上げると、その形をはっきりとみてとれる。


館内光景(イラストのパネル展示)

 写真とイラストを交えたパネルが展示されており、森林公園に生息する動物の生態や植物の多様性がわかる。残念ながら山菜採りや盗掘により減少してしまった植物もあり、環境の大切さと問題点も知らせている。深刻な問題として取り上げられているのは、ペットとして飼われていたアライグマが捨てられて繁殖し、元々いる狸の住処を奪い、野鳥の卵を食べるなどの環境への悪影響である。さらに野幌周辺の農地の作物被害も出ている。このような、外来種による在来種への影響は深刻である。
 捕獲されたアライグマの姿と、食べ残された数多くのエゾサンショウウオの尻尾の写真もある。
 貴重な森林公園を守り未来へ持続させる為、交流館は自然観察のマナーとして、
 ① 野生動植物をとらない(盗掘による植物被害がある)
 ② 野生動物に近づかない(餌を与える行為は動物の生活を歪める)
 ③ 生き物をすてない・持ち込まない(自然環境への悪影響)
 ④ 遊歩道からはずれない(多様な植物を傷つけてしまう)
 これらの項目を掲げている。


館内光景(図書コーナー)

 職員のいる受付カウンター付近に様々な資料が用意されており、持ち帰ることができる。なかでも森林公園の主な遊歩道を知らせるマップや、旬の動植物を紹介する『森じょうほう』は子供でも読みやすく理解しやすい。森の探求や観察の際にも活用できる。
 部屋のなかほどに図書コーナーがある。自然に関する書籍が約2千冊陳列されている。絵本や図鑑に専門書を自由に読むことができる。
 奥には、トノサマバッタとハネナガキリギリスの飼育や草花の展示がある。
 可愛らしいイラストで描かれたキツツキの紹介本を見つけた。野幌森林公園に生息するアカゲラ、オオアカゲラ、コゲラ、ヤマゲラ、クマゲラ、アリスイの6種類のキツツキを絵図で表し、鳴き声や体の大きさ、全身の色に好みの餌といったそれぞれの特徴を手書きで記載している。
 森でみられるキツツキがあけた木の穴は、種類により異なる。クマゲラによる穴の深さは10cm以上になると知り、驚いた。

 使われなくなった木の穴は、いたるところにあり、他の鳥の巣や、道内でも珍しい生き物であるエゾモモンガの住処になる。そうした「森の家作り」としての役割をキツツキは担っている。
 職員に聞くと、クマゲラは最も人気があるという。天然記念物にも指定されており、頭が赤く、キョーンキョーン・ケケーンと鳴く。出会えたら運がよい。バードウオッチングでもなかなかお目にかかれないそうだ。
 交流館は年に二回、情報誌『みずほ』を発行し、森の情報を知らせている。『みずほNo.37』では78年ぶりに森林公園で目撃されたヒグマの情報、そして交流館の近くでスタッフが遭遇した状況も詳しく説明している。
 木々と緑に囲まれた館内には、野鳥や自然を観察するコーナーもあり、季節ごとに変化する動植物を身近に見ることができる。

利用案内
所 在 地:〒069-0832 北海道江別市西野幌685-1
T E L:011-386-5832
開館時間:9:00~17:00【10月~4月は9:30~16:30】
休 館 日:毎週月曜日 年末年始
入 館 料:無料
アクセス:大麻駅より【大沢公園入口】へ向かい徒歩30分

付近の見どころ:
北海道開拓の村
道内各地の歴史的建造物を復元・再現した52棟の野外博物館。馬車鉄道(冬は馬そり)の運行や様々な体験イベントが年間を通じて開催される。
所在地 〒004-0006 北海道札幌市厚別区厚別町小野幌50-1

文・写真 雪乃 林太郎

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER