2024年が明けた。景気は良くなるのか、現状維持か、調整局面かーー見通せない状況だが、個人消費の動向をストレートに反映する食品スーパーマーケット業界は、どう動くか。この業界に入って63年目というアークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(88)の本音に迫る、本サイト恒例の新春インタビュー最終回を掲載する。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください。
(写真は、アークス・横山清社長)
ーー金融機関とはどういうスタンスですか。
「手元に資金があっても、金融機関を大事にすることが必要だと考えている。『リスクはあるが、あのトップを信用しているから金を出そう』という銀行の頭取は、今はいませんよ。そのような頭取がいなくても、そうしたトップたらしめるための金融機関との関係維持は大切なことだ。そのような関係は、金利についても反映されてくる。私たちの金利は、ゼロコンマの世界であっても他よりも低い。極端な言い方かもしれないが、先ほどの物流について他の企業と共同で取り組むよりも、コスト的なメリットは出てくると考えている」
「金融機関との関係では、取引先の親睦団体で、私は北海道銀行のらいらっく会全道会長をしているが、北洋銀行のはまなす会全道副会長にも就いている。アークスの取引先でつくる大輪会の会長は、大丸藤井セントラルの藤井敬一社長が務めてくれているが、藤井さんは北洋銀のはまなす会全道会長で道銀らいらっく会の全道副会長。つまり、私と藤井さんとで、金融機関親睦団体の会長と副会長をクロスして務めているわけです。そういうことも含めて、金融機関との関係を良好にしておくことは、企業経営には必要なことと私は思っている」
ーーアークスはこれまで、友好的統合、つまり横山社長の言う「M&A(マインド&アグリーメント)」で事業規模を拡大してきました。今後は、TOB(株式公開買い付け)も選択肢の一つですか。
「敵対的なTOBは、基本的に考えていない。今までと違う統合方法で仲間を増やすという意味では、いわゆる友好的なTOBは手法の一つと見ている。敵対的TOBで仲間に入れたとしても、私の提唱してきた八ヶ岳連峰経営はうまくいかないだろう。今後の統合も、マインド&アグリーメントが基本。アグリーメント的TOBなら考えられる」
ーー売り上げ1兆円を目指すことに変化はないと。
「1兆円を目指すにあたって足し算で到達して良かったねでは意味がない。関東以北でいかにグループ化を図っていくかがポイントだと考えている。志を同じくするバローホールディングス(本社・岐阜県恵那市)、リテールパートナーズ(同・山口県防府市)とアークスによる『新日本スーパーマーケット同盟』があるが、同盟の2社が1社を飲み込むことだったらやろうと思えばできる。しかし、それでは意味がないし、私たちが志しているものとは違うことになってしまう」
「私たちが加盟している共同仕入れ会社でPB(プライベートブランド)製造会社のシジシージャパン(本社・東京都新宿区)は、どちらかというと中小規模のスーパー連合体。新日本スーパーマーケット同盟は、中堅規模のスーパーの連合体をイメージしており、PBの製造も始めている。こちらの存在感も大きくなっていくだろう」
ーーアークスをリードする企業がラルズでありユニバース。ラルズの新規出店が少ないのはなぜか。
「お金もあるし、人もいるし、店を出そうと思ったら多少赤字でも出せないことはないが、私はそれ以上に大事な状況にきていると思うので、しばらくはじっとしている。水面下で水かきをしている状態だ」
ーー2024年4月1日より日本標準産業分類が改定され、「食料品スーパーマーケット」が新設されます。
「これまで、食料品スーパーマーケットは各種食料品小売業に分類されていた。土産物店など多種の小売店が含まれている分類だったが、消費者の利用頻度が高く、非常時にも国民へ必要不可欠な食品の安定供給を担う重要な産業であり、コロナ禍を背景にその実態を把握することが政策上も統計上も必要と判断され、日本標準産業分類に新設された。ある意味で、私たちが携わっている食品スーパー業界の“戸籍”ができたと考えている」(終わり)