雪原に響き渡るガラガラガシャーンという異音。野幌森林公園に似つかわしくない音の正体は、「北海道百年記念塔」の解体工事の音だった。百年記念塔を守る会が、解体差し止め阻止のアクションを起こしたその日、解体を進める北海道は外壁鋼板をはがす作業を始めた。
(写真は、外壁鋼板をはがす作業が始まった「北海道百年記念塔」)
1968年、北海道100年の事業として「開拓記念館」(現北海道博物館)、「開拓の村」とともに建立されたのが、「北海道百年記念塔」。高さ100mの塔は、北海道で初めて行われた設計コンペで、当時29歳で久米設計事務所に勤めていた瀬棚郡今金町出身の井口健氏の応募作が選ばれた。記念塔は、札幌市厚別区や江別市の小中学校の校歌・校章にも採用され、遠足や写生会の場所にも選ばれるなど地域の日常の風景に溶け込んでいた。
「収斂と拡散」をコンセプトにした塔の建材には、錆の皮膜で内部の腐食を防ぐコルテン鋼が採用された。建設費5億円の半額は道民の寄付で賄われ、先人を慰霊し、未来への決意を示すために建立された。
100年の耐久性を条件に設計されたが、北海道150年の2018年に部材が落下、老朽化が指摘されるようになり、高橋はるみ知事は、2019年に解体を決める。しかし、後にこの落下物は1992年に後付けされたものと判明。さらに道は2013年頃から維持管理を十分に行わないようになっていた。老朽化を加速させた原因は道にもあった。
解体を止めようと結成された守る会は、2022年10月に解体差し止め請求訴訟を提起。訴訟費用を賄うクラウドファンディングでは、1400人から1000万円を超える支援が集まった。同年11月の第一回口頭弁論を終え、2023年1月24日の第2回口頭弁論に合わせて一連のアピール行動を行った1月23日、道はこれまでの内部工事から外壁鋼板の撤去工事に入った。
守る会の行動が、箸にも棒にもかからない民意だと、考えているかのように見える道の挑発的な行為。高橋前知事の決定した解体について、鈴木直道知事は、自身の目でも内部を確かめて解体やむなしと判断した、としている。しかし、いともあっさりと夕張のリゾート施設を中国系に売り渡した夕張市長時代の鈴木氏の姿と、いかにもだぶるのである。1月24日、午前10時から札幌地裁で開かれた第2回口頭弁論の傍聴席は、1回目に続き満席になった。