全国約2600の宿を束ねる、一般社団法人日本旅館協会会長という要職にある観光カリスマの大西雅之氏(67)。その大西氏率いる鶴雅グループ(本社・釧路市阿寒町)の取引先などで組織する、「鶴(かく)ゆう会」が開催した9月下旬のゴルフコンペで賭けゴルフが行われたことが分かった。そのことを巡って鶴雅グループの対応が問われている。(写真は、網走市呼人にある「北天の丘あばしり湖鶴雅リゾート」)
「鶴ゆう会」は、同会の主催で年に一度、懇親を目的にゴルフコンペを行っている。今年は、9月28日に釧路市阿寒町の阿寒カントリークラブで行われた。大西氏など鶴雅グループの役職者7人を含む28人が参加した。
そのコンペで行われていたのが賭けゴルフ。参加者は、プレー前に8枠から連勝複式方式で勝ち馬を選び、1口500円、2口以上で投票。ラウンド後の宴席で優勝者が発表され、賭けゴルフの当選者には配当金が渡された。
この事実を報じたのは、北海道の月刊誌「北方ジャーナル」12月号。記事では鶴雅グループ役員が事実を認めているが、同誌発行後の11月21日、鶴雅グループは1枚の文書を北方ジャーナルと北海道新聞に送った。『弊社協力会主催のゴルフコンペにおける不適切行為の説明とお詫び』のタイトルで書かれたリリースは、鶴雅グループ、鶴雅ホールディングス代表取締役社長大西雅之氏の名前で、賭けゴルフの概要と違法性などについて触れている。〈責任を痛感し、深く反省…今後このような不祥事を起こすことがないよう高いコンプライアンス意識で行動…〉などと書かれている。
北方ジャーナルは、11月24日付自社サイトで、このリリースについて取り上げたが、北海道新聞は報じていない(北海道新聞は賭けゴルフについても報じていない)。鶴雅グループによると、「リリースを送ったのはその2社だけです。今後、他のメディアに送ることはありません」と話している。また、「自社ホームページ上でも掲載する予定はありません」と話し、問い合わせがあった場合は、対応しているという。
賭けゴルフについては、さまざまな意見がある。「数千円、数万円単位なら一時の娯楽に供するものを賭けたに過ぎない」という声や「仲間内のお遊びの範囲」、「ゴルフの楽しみ方の一つ」という声もあるかもしれない。
しかし、さる青年経営者は、「ゴルフはするが、お金を賭けることはしたくないし、していない」ときっぱりと答える。お金を賭けることに対する個人の向き合い方が、賭けゴルフをするか、しないかの分かれ目となっているようだ。ともあれ、仲間内のプレーで少額を賭けるならまだしも、影響力の大きい企業の冠が付いたゴルフ大会で全国組織のトップに座る人物が、軽々に賭けゴルフに興じることは、あってはならないはずだ。
賭けゴルフの事態が明らかになって以降の鶴雅グループの対応も、問われる。不適切行為の説明とお詫びのリリースを北方ジャーナルに送るのは当然としても、なぜ、他には道新1社にしか送らないのか。その道新は現在まで、賭けゴルフ問題やお詫び文書に紙面で触れていない。なぜ、他の新聞社やテレビ局が所属する記者クラブや関係取引先にリリースを送らないのか。
早期の幕引きを図ろうという鶴雅グループの姿勢が透けて見えると言われても仕方がない。道新の報道姿勢もどうなのだろう。道新が文書に関連した事実を報じないことは、賭けゴルフを容認していると取られても仕方がない。大西氏が自ら文書を手に関係先を回るくらいでなければ、〈高いコンプライアンス意識での行動〉とは言えないのではないか。