人口減少地域の金融インフラに光明、全国初ATM搭載の移動販売車が人口1200人の北海道・山日高で運行

金融

 人口減少が著しい北海道の町村では、地域の金融インフラ維持が課題となっている。過疎地での支店やATM(現金自動預け払い機)の撤退が進み、コンビニATMが一定の代替機能を持っているものの、コンビニATMでは通帳記入や通帳繰り越しができず、地域に住む利用者にとって不満が残る。そうした中で、コープさっぽろ(本部・札幌市西区)と苫小牧信用金庫(本店・苫小牧市)が連携して、ATMを搭載した移動販売車を10月25日から胆振・日高地区で走らせることになった。買い物支援と金融支援の両立を図る全国初の取り組みとなる。(写真は、コープさっぽろと苫小牧信金が共同支援事業とし運行を開始するATM搭載の移動販売車。左から苫小牧信金・小林一夫理事長、コープさっぽろ・大見英明理事長。2022年10月14日、コープさっぽろ本部前で)

 日高町は、2006年に旧日高町と門別町が飛び地合併して生まれた町。合併によって街の中心は旧門別町になり、旧日高町の賑わいは薄れている。苫小牧信金は、旧日高町に日高支店を展開していたが、人口1200人の地域での支店存続が難しく、2020年3月末に支店を廃止せざるを得なかった。ATMのみを残すことも検討したが、維持管理業者が対応できないとして、ATMを残すこともできなかった。

 しかし、日高支店撤退から2年が経過しても利用者の解約件数は少なく、苫信は住民の身近な金融機関であり続けている。こうした利用者に向けて苫信は、利便性確保の方策を検討する中で、コープさっぽろから移動販売車にATMを搭載する提案を受けた。提案から8ヵ月、3tトラックに商品約1000品目とATMを搭載した全国初の移動販売車がこの地区を走ることになった。

 この移動販売車は新車で、苫信のATMは既設のATMを搭載。コープさっぽろは、パセオむかわ店(勇払郡むかわ町)から移動販売車3台を走らせているが、ATM搭載車はそのうち1台で、沙流郡平取町、勇払郡むかわ町、勇払郡厚真町を巡回するコース。

 苫信は、ATMを搭載するにあたり、旧日高支店のエリアを巡回に加えるようにコープさっぽろに要請、10月28日から旧日高町も新たに巡回コースに組み込まれることになった。移動販売車は、火曜日から土曜日まで曜日ごとに決められたコースを巡回しているが、ATMは火曜日から金曜日まで利用できる。旧日高町の巡回は毎週金曜日。

 搭載しているATMは、支店などにあるATMと同じフルスペックで、入出金、通帳記入、通帳繰り越しができる。苫信と提携信金の手数料は無料、信金以外の金融機関も利用できるが、その際は手数料(110円)が必要。1日で約20件の利用を見込む。移動販売車には苫信職員1人が同乗、ATM利用者に寄り添う。

 全国の金融機関では、過疎地域に向けてATMを搭載した車輌を運行する取り組みを行っているケースもあるが、移動販売車にATMを搭載して買い物支援と金融支援を行うのは初めて。コープさっぽろの大見英明理事長は、「今回の取り組みで経験、学習を積み、他の信金にも声を掛けて、全道で買い物支援と金融支援ができるモデルを広げていきたい」と話した。

 苫信の小林一夫理事長は、「買い物支援と金融機関へのアクセス支援を同時に実現する画期的な取り組みで、大きな意義がある。人口減少、高齢化に直面している地方を金融面から支えるために、コープさっぽろと協力しながら事業を進めたい」と語った。

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