札幌の今、解体ノート㉒中央区北3条西1丁目「エア・ウォーター北3条ビル」

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 マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の22回目は、中央区北3条西1丁目の「エア・ウォーター北3条ビル」。(写真は、解体工事中の「エア・ウォーター北3条ビル」)

 このビルは、北海道経済の歴史がある意味で凝縮されたビルだった。もともとは、北海道のガスメーカー、ほくさん(旧北海酸素)の本社が入っていたビル。ほくさんは、酸素やLPガスなど各種ガスの販売だけでなく、1963年にはLPガスを利用した日本初の家庭用ユニットバス「バスオール」を開発。「バスオール」をトラックに積んで全国のニュータウンで移動展示する販促手法も注目を集め、千里ニュータウンでは大ヒットするなど、北海道を代表する企業の一社だった。

 ビルは、ほくさんが本社をこの地に移した1967年頃に竣工したようだ。その後、まだバブル景気が残っていた1993年、ほくさんは大同酸素(本社・大阪市中央区)と合併、ほくさんを存続会社にして大同ほくさんが誕生する。しかし、社長を務めていた創業者、水島健三氏の子息、茂氏は1997年に解任され、2000年には共同酸素(同・同)と合併、今に連なるエア・ウォーターが誕生する。2010年には北海道の事業再編で北海道エア・ウォーター、2020年には地域再編によりエア・ウォーター北海道となった。このビルは、こうした幾多の変遷を経ながらも北海道の拠点として利用されてきた。しかし、エア・ウォーター北海道発足後に本社は近隣のビルに移転した。

 地下2階、地上8階建てのビルは、2021年9月から解体工事に入っている。工事監理はドーコン(本社・札幌市厚別区)、工事はコンステック(同・大阪市中央区)が元請け、本間解体工業(同・札幌市西区)が手掛けている。解体工事は2022年6月30日まで続く。ほくさん時代から続いた合併、再編の系譜を凝縮したビルが間もなく姿を消す。

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