アークス横山清社長が語った相次ぐ経営統合の狙いと東北6県でのシェア拡大作戦の中身

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 岩手県盛岡市に本拠を置くジョイスとの経営統合を発表したアークスの横山清社長は、21日に札幌証券取引所で統合についての考え方を60分に亘って会見、持論を展開した。22日に報道した会見要旨の後半部分を掲載する。(写真は、21日に会見した横山清社長)
 
 
「スーパーアークスエクスプレス(札幌市北区新川西1条4丁目)は、5社が手がけた店でいずれも失敗している。これを実験店ということで営業している。月商で1億円をやると収支トントンになる。一昨年の12月16日から始めてもう一息と丁度いいところまできたが、超大手が近くにディスカウントの店を開いた影響で採算店から一歩退いている。あのスケールであの立地で採算性を取れるような店づくりをすれば、経済がもっと下向きになって所得が減っても利用されるお客様は心配のない生活ができるくらいの営業ができるだろうと今、必死になって努力している」
 

「小売業はあまり儲からなくてしかも汚れ仕事が多い。従業員も経営者もなかなか現状では満足できない。何十年も(我々はこの仕事を)やってきたが、毎日買っていただくお客様のために口ではお客様のためと言っても、口で言うのと態度とは違う。これをずっと何十年も続けてきている。ジョイスの場合、昭和26年に食品業の店を起こし、その後セルフサービスを導入したが、今は4人目の社長で創業者は90歳でご存命。お客様のために店はあるんだということを実際にやっているところとそうでないところがあるが、我々は必死になってそれ(お客様のために)をやっている。そういう志を一(いつ)にしている」
 

「折角このレベルまで来ているのに、むざむざと他の要因で(会社を)持っていかれたり、倒産させられたりすることは忍びない。足らざるものは補うことは資本でも商品供給でも管理技術でも同じ。当然、働く人たちの教育、待遇もそうだ。 (株式の)交換比率がどうだとかあるが、それもさることながらやはり何と言っても経営者同士、経営の企業文化というものが一緒でないと統合には踏み切れない」
 

「メリット論から言えば、1+1は2にならないとすれば統合する必要はないじゃないかということですが、1と1を足して1・8くらいかもしれないが、それでも私はメリットが生まれてくると思う。1・8に下がってもやがては2・5になっていくことをずっと今まで体験的に実証してきましたから。例えば今1万ケース買っている商品が2万ケースになったら半値になるのかと言うと、なるはずはないが数%は安くなることは事実。統合によるコストもかかるのでそう簡単にはいかないが、合併とか吸収することが革命であれば、それでコトなれりではなくて、(統合は)これからコトが始まる。1000の改善とはそういうことで、今やっているひとつひとつの細かいことをさらに継続していくことに尽きる」
 

「ユニバースと去年秋に統合してまだ半年しか経たないが、規模からいくと(統合前の)アークスの方が大きかったわけですが、チェーンストアの形とか管理技術、教育レベルなど、ユニバースが断トツに良いものを持っている分野がいっぱいある。アークスの教育体系の最高責任者にはユニバースの社長三浦(紘一氏=アークス会長)さんにお願いしているように、いいところはどんどん取り入れていく。働く人がやる気になることも相当大きなメリット。新しい異文化に接して新しいエネルギーが出てくるメリットもある。もちろん資本の充実によって財政も良くなる。ジャスダックから東証2部、1部と10年かかって増収増益を重ねてきて、株価も今の状況としてはマシ。今回は増配も控えましたが38円を持続している。これからも期待に応えるように、株価もそうですし中身も充実して経営基盤の指標をシッカリ見つめながらやっていく。統合メリットは目に見えないものも見えるものもすべて評価の高いアークスだと自負している」
 

「ふじと道北ラルズは2年前から統合することが決まっている。ただ、お互いに競い合いながら両社も非常に良い成績を上げている。旭川は道内でも一番価格戦争の厳しいが、その中で増収増益を重ねているので落ち着いたところで(統合)ということだったが、今度はイオンがビック化という超安売りの店舗に切り換えているということで少し延びてきたが、今期をメドに作業に掛かっている」
 

「アークスとの統合に、具体的に4社から手が上がっている。ただ相手にも失礼で顰蹙を買うのは分かっているが申し訳ないけど、地域の勝ち組で我々と志を同じくして早急に手を組める相手と交渉を進めている。チョイス、選択するのは失礼かも知れないが、手を挙げたところすべてと組むことはできない」
 

「東日本をターゲットにと良く言っていますが、西の方からも声は上がっている。後継問題や幹部の高齢化、人材不足など、大手を除いて1200社くらいある全国の食品スーパーの今後の解決策のひとつがアークスのやっているような方式じゃないかということで、いろんな問い合わせがある。一緒になる云々ではなくて、『そういうものを作りたい』、我々のやってきたことをモデルにしたいと2~3の会社が既に動いている。東北には、マークスという会社もある。震災で大変な目にあった陸前高田のマイヤの社長が社長になってやっています。マークスは、Mを取ったらアークスじゃないかと言われていますし、一緒になるのではないかと言われるが、それはありません」
 

「正解かどうかは分からないが、少なくとも10年間(アークスという)この形で増収増益を重ねて今のスケールに来た。少なくとも食品スーパーでは売り上げ規模全国2位、足し算だが収益はナンバーワンというのは、業界のひとつのモデルになるだろうという見方もあると聞いている」
 

「消費者メリットは、良いものが良いサービスでより安く買えることだが、統合によって劇的に変わることはまず有り得ない。ただ、継続して消費者サービスができるところはそれほど多くはない。大手といえども無理をすれば必ず続かない。そのことは10年数年前に全国でナンバーワンと言われていた企業も今や見る影もないことから分かります。我々は埒外だったが、当時の流通トップ5は2強3弱と言われていた。3弱と言われた企業の結末はご存知の通り。我々は今のレベルで満足していない、こういう状況を継続してなおかつ今の状況よりもはるかに高いレベルの消費者メリットを追求する目的をもって統合を進めている」
 

「値段が安ければ良いというわけではない。おそらく我々の規模は1兆円になっても今よりも劇的に価格が安くなることはない。CGCは全国8ブロックに分かれ、加盟企業は226社で店舗総数は3600店舗くらい。CGC加盟店の総売り上げは約4兆3000億円くらいだ。そういう全国規模の共同仕入れや(プライベートブランドの)共同開発のメリットを活かしながら、エリアでアークスの地域シェア30%を目標にすれば大きな店、大きな企業とでも十分競り合っていける」
 

「北海道だけで展開していたときは、年商3000億円を構築することによって我々が理想を追求する道筋が確保できるだろうと考え達成してきた。北海道の食品マーケットは年間1兆5000億円くらいで、最終的には全道で30%くらい、5000億円くらいいくだろうとやってきた」
 

「今度は、北東北でナンバーワンのユニバースと手を組んだが、ユニバースは年商1000億円を少し超えていて、このユニバースを中心としたマーケットエリアで売り上げ3000億円を想定している。東北6県のうち3県に展開しているが、今回のジョイスは今年中に宮城に1店進出するので東北4県で1500億円程度になる。いつまでにということは言えないが、3000億円体制をひとつの目標に進んでいく。年間20億円の店を10店作っても200億円にしかならない。その計算でいけば10年くらいかかるが、どこそこを買収・統合してということは経営戦略の根幹に入れないのがアークスの考え方。ただ、東北の売り上げが今の倍になるには10年以内には実現できるだろう」
 

「常識的には10年レンジくらいで着々と進んでいきたい。その間に着々と人口も減っていき、おそらく企業も減っていく。大手は北海道で嵐のように大型の店をどんどん出店したが、まだ出そうとしているところもある。しかし、地方に行くと商店街に無理矢理割り込んでいって、商店街をシャッター街にしてしまって採算あわないからやめたというようなところもある。帯広のヨーカドーの店は15年以上空き家になっているし、苫小牧駅前のヨーカドーも商業施設ではなく不動産業者が買ったという」
 
 
「これからもいろんなことがあるが、そういうものを読み込んでいつまでに『こうです』と言えないが、リージョナルの中で食品スーパーはどういう形でも3000億円くらいでマーケットシェアを限りなく30%に近づけると、どんな厳しい経済状況や激変があっても今のサービスや商品供給、そしてプライスゾーンも消費者の皆さんが一番満足できるような形での営業が継続できるだろうと考えている」
 

「北海道と東北で5000億円の体制が見えてきた。しかし、単純に拡大して数を誇るというのでは意味のないこと。失礼を省みずにいえば、我々仲間内ではダメ+ダメはダメ、ダメ×ダメはまるでダメ。マイナスとマイナスをかけたらプラスになるという某団体の理事長もいるようだが、算数とは違いますからね。マイナスとマイナスかけても、倒産会社が利益会社になるはずがない。いずれにしても10年以内に東北でも礎が築けるのではではないかと思っている」

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