一般財団法人「食と健康財団」は18日、札幌グランドホテルで第18回食と文化フォーラムを開催した。ゲストにシドニー五輪女子マラソン金メダリストでスポーツキャスター・マラソン解説者の高橋尚子さんが登場。食と運動から健康を見直そうと集まった700人を超える聴衆に語りかけた。(写真は、高橋尚子さんと池上公介氏=左とパネルディスカッション)
フォーラムでは、国立病院機構函館病院長で日本笑い学界北海道支部長の伊藤一輔氏が『大笑いする顔には健康が来る~笑いに学ぶ健康学~』と題して基調講演。伊藤氏は食が命そのもので、世界の長寿国や地域には食を大切にする伝統があると指摘。「20年ほど前まで沖縄は長寿地域の国内ナンバーワンだったが、我々の間で沖縄クライシスと呼ばれる現象が起きている。それは男性の平均寿命が1位から26位に急激に落ちていること。食の欧米化が影響しているが、女性はなぜか依然として1位を続けている」と語り、食の変化が生命に影響している事例を紹介。
食と同じくらい大切なことは笑うことだとし、「笑うとナチュラルキラー細胞が活性化され免疫機能を高める。この細胞は作り笑いでも活性化する。大脳の血流が笑いで活発になるし、セロトニンという癒しのホルモンも出る。皆さんには笑状日誌をつけることを勧めたい。いつ笑ったかを毎日書いていくのです。笑うことで遺伝子が変わるので、70%は皆さんの努力次第で長生きできる。クラーク博士の言葉を借りれば、『日本人よ、笑志を抱け』です」と会場を盛り上げた。
続いて、池上公介池上学園理事長が聞き手になって高橋尚子さんのトークショーが行われた。
高橋さんは小学校低学年まで大人しい子供だったが、あるとき小学校のシラミ検査で長い髪を切らなければならなくなってから、「男の子になる」と決心、それ以来小学校卒業までスカートを一切穿かず活発になったエピソードを語り、大学まで教師である両親から早く陸上競技を辞めるように説得され続けていたという。
その後、リクルートに入社して小出監督との出会いや新人歓迎会で体にアルミホイルを巻き付けてオバQの歌に合わせて踊ったことが『Qちゃん』の名前の由来となったことなどを語った。
高橋さんは、現役で走っていたころ、食べることと走ることが仕事のようなものだったため、納豆やひじき、レバーは毎日食べていたと言い、納豆は朝に2個、夜に2個食べていたそうだ。
現役を退いてからも野菜には特に拘っていたが、そんなときに野口観光の野口秀夫社長から「農業をやってみませんか」と誘いを受け、伊達市大滝区にQちゃんファームを開設。「農業を実際にやってみて、野菜のことをこんなに知らなかったのかと思いました。種植えでも長い時間がかかっているし、現場で自分でやってみて知ることの大切さを感じています」と食育にも力を入れ、地元の小中学生と一緒に苗を植えたり、全国から親子連れを招いた農業体験も実施していることも話していた。
その後、池上氏がコーディネーターになり、伊藤氏と高橋さん、おおあさクリニック院長の内藤貴文氏、食と健康財団理事長の岩崎輝明氏、オロロントライアスロン女子の部で10連覇している村上純子さんが参加したパネルディスカッションが行われた。
岩崎理事長は「自然が遠のけば病が近づく。人間の体の中には100人の名医がいるというが、その名医のスイッチを入れるのには食を大切にしていくことだ」と結んだ。