シンガー・ソングライターの槇原敬之容疑者(50)が2月13日、警視庁に覚せい剤取締法違反などの疑いで逮捕され、その余波は道内にも及んでいる。ホクレン農業協同組合連合会(本所・札幌市中央区)が、昨年100周年を迎えたこと記念して制作したオリジナルアニメーションの主題歌を槇原容疑者が担当していたからだ。このアニメーションは、昨年12月からYouTubeで公開したばかりだが、逮捕後の2月14日から配信を停止、とんだとばっちりを受けている。(写真は、札幌市中央区にあるホクレン本所)
ホクレンは2019年4月18日に創立100周年を迎えた。ホクレンは、北海道の農家組合員向けに生産資材を提供、農家組合員が生産した農畜産物の流通・販売、農産加工品の製造販売などを行っており、全農とほぼ同じ機能を持つ。農協系統組織は、農家組合員、農業協同組合、連合会の3段階からなりそれぞれが平等というのが組織の理念。会長、副会長などは各地の農協トップが務めプロパー職員は専務理事どまりで会長、副会長にはなれない決まりもある。任期は1期3年、長くても5期以上は常勤役員を続けることができない縛りがある。
そうした組織の特性ゆえに、ホクレンには“目立たず気負わず地味にしっかり”と事業を推進する風土が育まれている。100周年に際してもささやかな記念式典の開催や100周年記念ロゴマークの決定、消費者や生産者に旅行やホクレン商品、北海道農畜産物が当たる抽選キャンペーンを行った程度で大々的に祝うようなことはしなかった。
それがホクレンらしさともいえる奥ゆかしさで、やや気張ったのがオリジナルアニメーション『from North Field』の制作だった。十勝を舞台にした連続テレビ小説『なつぞら』のテイストを生かしたもので制作会社ロボット(東京都渋谷区)とテレコム・アニメーションフィルム(同都中野区)が手掛けた。キャラクター原案は『宇宙戦艦ヤマト2199』や『Paradise Kiss』のキャラクターデザインを担当した結城信輝氏が務め、俳優の板橋駿谷氏が声を演じホクレン職員の主人公、保田樹氏を中心に北海道の農風景と農業に携わる人たちの物語が描かれている。
その主題歌に槇原容疑者の楽曲『You are so beautiful』が採用され、アニメーションを彩っていた。しかし、逮捕後の14日から、ホクレンはYou Tubeの配信停止の措置を取った。槇原容疑者は20年前にも覚せい剤取締法違反で逮捕され、懲役1年6月(執行猶予3年)の判決を受けている。その後、活動を再開していた。楽曲に罪はないものの作った本人が薬物使用の疑いで2度目の逮捕となっては配信停止もやむを得ない。100周年を機に若者向けに農業の大切さとホクレンの活動を奥ゆかしく伝えようとした企画も、今回の事件で雲散霧消してしまった。著名人を起用するリスクが奇しくも顕在化してしまったということか。