慌ただしい年の瀬。街の中は人で溢れかえりどの顔もどこか楽しげ。過ぎ行く1年を惜しみ、来る年に願いを込める街の表情は、歳末を彩る歳時記のよう。そんな喧噪の街を少し外れた場所で、時の躍動を示すようにビルの解体工事が行われている。さすがに年末年始は休業しているが、解体工事は新旧交代を表象する結節点。年を跨ぐ解体現場を歩いてみた。(写真は、工事用フェンスに覆われた「おれの札幌ビル」)
札幌市中央区南7条西6丁目。ススキノのはずれに位置するこの場所で、「おれの札幌ビル」が工事用フェンスに覆われている。居酒屋「おれの札幌」は、北見や千歳、網走でドライブインを経営していたオホーツク観光(本社・北見市)が展開していたが、同社は2017年11月に各施設を閉鎖、「おれの札幌」も閉店となりビルも閉鎖された。それから2年、解体かリノベーションか、詳細は不明だが、ヤマキ山下工業(札幌市北区)が足場を組み、工事期間は2019年11月15日から20年4月30日となっている。この2年間で周囲はホテル建設が進み3棟のホテルが新規にオープンした。居酒屋ビルはどう生まれ変わるか。
(写真は、旧「オンワード樫山札幌支店ビル」解体工事)
中央区北1条西16丁目の知事公館南側の向かいでも解体工事が進んでいる。旧「オンワード樫山札幌支店」ビルの解体だ。アパレル不振による業績悪化で資産売却を余儀なくされ、その対象になったのが同支店ビル。このビルは18年8月に飯田グループホールディングス(本社・武蔵野市)の子会社、一建設(同・東京都豊島区)が約12億円で取得していた。
建物は1979年に竣工した8階建て。解体工事を手掛けているのは桂興産(同・東京都江戸川区)のほか有限会社エフ・アドバンス(札幌市豊平区)、琉章(同市東区)、ライフニックス(同市北区)、ホリイ(同)で、工事期間は19年9月9日から20年4月30日まで。敷地は約437坪(1445㎡)、解体後には分譲マンションが計画されている。
(写真は、「フジタビル」解体工事)
北1条宮の沢通を西へ向かった北1条西21丁目では「フジタビル」の解体工事が行われている。クリニックなどが入っていた6階建てビルで、解体工事は19年11月25日から始まった。こちらも防音シートなどで建物は覆われているが、一部で解体中の建物が見える。解体工事は厚西工業(札幌市白石区)が行っている。周辺にはマンションが林立しているが、解体後はどう利用されるだろうか。
(写真は、塩業ビル解体工事)
南1条西7丁目の電車通り(南1条通)沿いにも解体現場がある。1964年、1回目の東京五輪の年に建設された塩業ビルがそれで、地下1階、地上5階建て。塩業と名付けられていたことから塩に関わる会社が入っていたようだが、土地建物はワイ・エス・ジー(本社・札幌市白石区)が取得、19年11月25日から解体工事が行われている。
解体はシンヨウ(札幌市厚別区)が行っており工期は20年4月10日まで。電車通りから仲通りまで敷地があって面積は約230坪(761㎡)。解体後にはホテルの新築が計画されている。
その他にも大小交えた解体工事が行われているが、年末年始、解体現場は動きが止まりしばらく静寂に包まれる。悲しげな姿に一層寒さが募る。