札幌の「なにわ書房」や「喜久屋書店BOOK JAM K&S」が相次いで自己破産に至る中、書籍等の全国チェーン、文教堂グループホールディングス(HD、本社・川崎市高津区)が、私的整理の一つである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)を利用して債務超過を解消、事業再生を目指すことになった。(写真は、北海道最大級の模型売り場がある札幌市豊平区の「文教堂書店平岸店」)
文教堂グループHDは、書籍や雑誌を中心に文具、DVD、レンタルビデオなどの全国チェーン店「文教堂書店」を展開している。ネット通販やデジタルコンテンツの普及で書籍市場が縮小、厳しい経営状況が続いている。2018年8月期には20店舗の不採算店を閉鎖するなどしたが売上高273億8800万円、経常損失5億8900万円、純損失5億9100万円で2億3000万円の債務超過に陥っていた。
債務超過を解消できなければ1年後に東京証券取引所ジャスダック市場の上場廃止となることから全国の不採算店閉鎖を加速してきたが、経営改善には結びつかないとして、事業再生ADRを活用することにした。
民事再生など裁判所を通じた法的整理と違い、「産業競争力強化法に基づく特定認証紛争解決手続」と称される私的整理の一つで、その取り扱い団体である一般社団法人事業再生実務家協会に6月28日に申請、受理された。
今後は、金融機関借入金(約135億円)の元本返済一時停止の交渉を行い、債務超過の解消、事業継続を進めていく。再生計画の策定や事業再生ADRが成立すれば20年8月まで上場廃止は猶予される。
文教堂書店は、札幌市内に12店舗あり、その他函館に3店舗、新千歳空港に2店舗の合計17店舗ある。道内では19年3月に「千歳店」、5月に「札幌パルコ店」(札幌市中央区)、6月に「西岡店」(同市豊平区)が閉店している。文教堂グループHDの佐藤協治社長(52)は、1988年に北海道の書店、「本の岩本」に入社。同社は2000年に文教堂に販売部門を譲渡、佐藤社長は文教堂に移り北海道事務所長として道内販売網を拡大していった経緯がある。北海道と縁の深い佐藤社長は道内店舗網をどう再構築するだろうか。