中国で会計事務所とコンサルティングを手がけている中国マイツグループと業務提携したSATO社会保険労務士法人は21日、中国マイツグループ代表取締役の池田博義氏を札幌に招き中国・アジア進出セミナーを開催した。池田氏は、「中国・アジアを内需と考えていかなければ日本企業の成長はない」と指摘、中堅中小企業が進出しやすいサポート体制を整えるため中国・韓国・ベイナム・タイ・マレーシアで10年以上会計事務所やコンサルティングで実績のある日系事務所と進出支援機構を設立「進出するかどうか迷っている企業の背中を押していきたい」と語った。(写真は池田博義氏)
中国は2011年度の購買力平価換算のGDPで11・2兆㌦と米国の15・2兆㌦に続く世界2位。それが16年度には19兆㌦に拡大し、米国の18.8兆㌦を抜いて世界トップになると10月に開催された世界経営者会議で報告された。
また、EU、北米、アジアのブロックで見ても20年度の購買力平価での名目GDPでアジアは49兆㌦になるとされ、EU(28兆㌦)と北米(26兆㌦)を合算したのと同規模になり、「アジアが圧倒的に優位になり、日本企業はアジアを内需と考えていかなければ成長はない」と池田氏は強調した。
ただ、中国進出してもうまくいく企業とそうではない企業があると池田氏は言及。池田氏も94年に上海で中国人スタッフ2人と3人で会計事務所を立ち上げた際、給料袋に給与を入れてスタッフに手渡すと池田氏の目の前で給料袋を破り、お金の勘定を始め明細と合っていることを確かめた上でサインをすることに戸惑ったという。
中国進出がうまくいかない理由として進出企業のコンセンサスが得られていないことや中国やアジアに対して日本が優位という考えがあること、トップは本当は進出したくないと考えていることなど本気度で劣っている企業は進出で失敗すると池田氏は訴えた。
上海では日系企業に勤める日本人が約10万人住んでいるが、ブーベイと呼ばれる地区にある日本人村に約3万5000人が住み中国社会に進んで入っていってないと池田氏は言い、「10万人のうち中国語を話せるのは5000人ほどだろう。しかし、片言の中国語で彼らの中に入っていくことが大切」と述べた。
そのうえで、「中国人と一緒になって忘年会や慰安旅行をしている進出企業は業績を伸ばしている」と紹介。ただし、中国人は仕事を離れたら社内の関係はまったく関係ないとして、池田氏自身が現地スタッフと旅行に行くために上海駅で立って待っていると、女性スタッフが後ろから池田氏の頭を軽く叩いて「楽しくやろう」と言ってきたときには驚いたというエピソードも紹介した。
もっとも、池田氏は毎週月曜日に社内メールで中国語による朝礼をして経営理念や社訓を知らせているが、日本人よりもはるかに中国人スタッフは良く読んでおり質問は圧倒的に中国人スタッフから寄せられるという。
日本の中堅中小企業の中国・アジア進出をよりスムースにサポートするために立ち上げた進出支援機構は、ワンストップで会計監査やコンサルを行うためのもの。「会計事務所は、遅いレスポンスで偉そうに振舞うのが一般的だが、我々の機構では、即レスポンス、喜んでをモットーにしている」とジョークを交えて池田氏は語った。
中国に進出している日系企業は2万7000社で日本が出資している中国企業は約8000社あるといわれている。今後も中国だけでなく、ベトナム、タイ、韓国、マレーシアなどへの進出は増えてくると見られ、「誰かが日本企業のアジア進出の背中を押してやらなければならない。『(進出するのは)嫌だな』と思っている経営者もいるが、今こそ絶好のチャンス。中堅中小企業の背中を押せるような信頼関係のもてる会計事務所であり、進出支援機構でありたい」とアピールした。