アークスが臨時株主総会で「ユニバース」統合を了承、横山清社長の総会後記者会見45分を全収録

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アークスは7日、札幌パークホテルで臨時株主総会を開き、10月21日に北東北の食品スーパー、ユニバースとの経営統合を承認した。総会は午前10時から始まり出席株主は235人。株主からの質問はゼロで25分で終了した。統合後にユニバースの三浦紘一社長がアークスの会長に就任、現在の会長である福原朋治会長(福原社長)は副会長に、社長は横山清氏が引き続き務める。代表取締役3人のトライアングル経営がスタートする。(写真は臨時株主総会の会場と総会後に会見する横山清社長)

 

臨時株主総会の終了後、横山社長は記者会見し、「ユニバースは極めて優秀な食品スーパー。統合によってこれまで食品スーパー業界が到達できなかったことも実現できる可能性がある」と新しい食品スーパーのモデルを作り上げていく決意を語った。
横山社長の会見は45分間に及んだが、以下に会見要旨を抜粋した。

 

「今、業績が良くても趨勢として必ず困難な状況が高まるだろう。強い者同士が、手を組んで広域でも共に事業ができるということでユニバースを選んだ。ユニバースは北東北で強くて業績も良い」

 

「ユニバースは北関東に向かって岩手まで出店している。東北地方のマーケット拡大は、三浦紘一ユニバース社長がキーマンになる。同じ共同仕入れ会社の全国組織であるCGCの盟友でもあるので、次なる10年の基礎づくりを一緒にしたい」

 

「私は、アバウトで拡大主義だが、三浦さんは緻密でコツコツと積み上げていくタイプ。その中間が今度副会長になる福原朋治・福原社長。この3人のトライアングル体制は非常に重要。後継者育成を含めて3代表体制によって、短期間で未来志向のためのプットフォームづくりをきっちりやっていこうと思う」

 

「業界では両社ともレベルは高い。統合によるメリット論で言えば急激なプラス効果はない。ただ、これからの少子高齢社会に対応するために、今もっているものをさらにスキルアッしていくことが大事。今までこの業界が到達できなかったようなことも、両社が手を合わせれば到達できるのではないか。極めて優秀な競争相手を仲間にして、身内で競い合いさらに高いものを目指していく」

 

「我々の業界は、アメリカにあるものを導入するだけという繰り返しがあった。しかし、未知の段階、つまり海図のない航海みたいな時期に入ってきたわけで、両社の力を合わせてステップアップする第一歩にしたい。SM(食品スーパー)の新しい運営形態の半分はこれから創出していきたい」

 

「統合によって監査役は共通になるがユニバースの役員として私が代表取締役会長になる。ユニバースの本社がある八戸へ、これから月1回の役員会に札幌から出向く。向こうから札幌に来ると複数人が来ることになり、私が一人で行ったほうがコスト安くなるから」

 

「同業のどんぐりの背比べからひとつ抜けられる。シナジー効果、我々が言っている創発現象というか、あるレベルを超えるとハッキリと優位な立場を確立できると期待をもって進めたい」

 

「流通業界は、ルールなき戦いのようになっている。ここでひとつ群を抜くという訳には行かないが、つま先だってハッキリと標高を上げておくというくらいの気概でやる」

 

「企業の絶対優位性を絶えず追求するために、たまたま東北の企業と手を組んだことになるが、これは東京一極集中主義を打ち破るひとつのツールにもなる。都会にいるよりも快適でコストが安く、生活の根幹である食品スーパーが日本最高レベルで役割を果たす。それが実現できれば、東京の所得の半分で青森、函館、札幌、旭川に住むことができる。そういうことが我々の夢だし、『アークスグループの店のあるところに移住しましょう』と提案できるくらいのことをしたい。ちょっと今日は何か私は興奮しているのかな?。総会終わったばかりだから。ともかくその第一歩と思っている」

 

「今回の統合は、食品スーパーでは変わった統合ではないが、業界ではエポック的な統合と見られている。非常に多くの様々な問い合わせ、傘下に入りたい、もっと緩い形の提携をしたいなどの話がある。役員会で智恵を合わせてチョイスしながらやっていきたい」

 

「どの地域を見ても、オーバーストア、オーバーカンパニーであることは間違いない。だからこれを契機に再編成というか、弱肉強食だけでないルールで再編成が進まないといけない。そういう面では我々も不遜な言い方だけども、いろんな話があるが、気の毒だとか、弱者救済のようなことはできない。だめなところとは組まないと敢えていっている。不遜な気持ちは持っていないが、ダメ+ダメはダメだし、ダメ×ダメはまるでダメ。半分冗談だが半分は本音だ。M&Aというと、カネと力というイメージだが、私は『マインド・アンド・アグリーメント』だと考えている」

 

「今のところ、環境変化と我々が対応しているスピードは大体併進しているが、経済環境がもっと厳しくなれば飲み込まれるわけですから。飲み込まれないようなことを次から次に手を打っておかないと」

 

「道内では人口が減っていくけども、その中で5000億円くらいの売上げ体制を作る。これからは、モノを仕入れて売るだけではなくて、日配品であるとか、豆腐、蒟蒻、納豆の製造部門を我々が担っていかないといけない気がしている。そういうことも含めてきちんとした体制を作る」

 

「オーバーカンパニー、オーバーストアというのはそれなりに固まっていく。例えば1~3店舗の家族経営でやってきて収益も高いしきちんとやっているスーパーでも後継者がいないようなことが次から次に起こってくるだろう。そうすると、着実に手を組めるところとなるとおこがましいが、我々のグループが最善のチョイスの体制だなと思っている。実際にそういう人たちが何人かいる。昨日も私のところへ個人的に『こうしたいんだけど』と相談に来た。私ならこうしますよと、アドバイスしたが、道内ではそういう時期に来ている。こっちから話を持ちかけて、『どうですか、多少無理があっても仲間としてやりませんか、足し算でこれも入れたあれも入れた、それで100億、200億になります』と。しかし慢性病を持っていたり外的疾患を持っている人たちをかき集めて、自分たちのところにきたら皆健全になるとはいかない。方法論を間違うと相手にも失礼なことになるし、わが身も潰すことになる。いずれにしても、このままの状況で何十年間も進むわけには行かなくなっている。おそらくこの1~2年でもっと激変すると思う」

 

「東北CGCは全国8ブロックの中で北海道CGCよりも総売上げが少し多い。東北CGCでは、3分の1くらいがユニバース。北海道CGCはアークスが9割ですから、ユニバースのCGC商品扱いは少し変わるかも知れません。東北CGCを通じて入るわけですから。PBもアークスグループで取り決めた金額やロットでユニバースが仕入れることができるようになる」

 

「東北6県を中心にして北関東からも(提携の)話があるのでユニバースを中心にして進んでいくと思います。統合すると売上げは4000億円を超えるが、私は道内だけで5000億円を目指すと前から言っている。今は道内で3000億円を少し超えたが、これからもっともっと激しい戦いになる。大手がなりふり構わずものすごい安売り戦争をする。大手だからといって明日から粗利益を20%下げますというようなやり方で成り立つはずがない。皆試行錯誤でやっているわけです。どんな大きな相手であろうと北海道では我々のシェアはナンバーワン。このメリットを十分に受けてお客様も喜ぶ、我々と手を組む企業先も喜ぶ、こういう中で5000億円体制を作るには、新しい店の出店と同業で気の合う相手とマインド&アグリーメントという新しいM&Aによって食品小売業を中心とした企業群ができると強く思っている」

 

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