北海道エアシステム(HAC)の西村公利社長は31日の会見で、社長報酬の10%を1ヵ月間返上することを表明した。奥尻空港での異常降下に伴う安全管理体制の不備で国土交通省から事業改善命令を受けたため、「一定の管理上の責任を取る」(西村社長)。31日の臨時株主総会で15人集まった道など自治体株主に説明し了解を得た。また、西村社長は、今年度の営業収入が当初の計画より9100万円減収になり、経常損益でも200万円の赤字から7600万円の赤字に拡大することも正式に明らかにした。(記者の質問に西村社長が気色ばむ場面も=写真)
 
 西村社長は、会見で社長報酬返上の説明を行った際、不機嫌さをあらわにした。この日の新聞朝刊各紙に既に社長報酬の返上が報じられたことに憤ったのかどうかは分からないが、集まった記者の質問が始まる前に自らの責任の取り方として報酬返上を決めたことを説明した。
 
 西村社長は、JALの経営撤退によってHAC株主構成が代わり、道や札幌市、就航地自治体、道内大手企業などオール北海道体制による新生HACが4月に誕生したことで、自らは退任することを決めていたが、「急遽続投することになって私自身も大変驚いた。しかし、続投する以上は新生HACの経営に必死に取り組む覚悟を決めた」と当時の心境を振り返った。
 
 その2ヵ月後、6月に丘珠空港集約を果たした後に起きた奥尻空港での異常降下で、同社の安全管理体制が適切に運用されていないことが分かり、国交省は事業改善命令を受けることになる。
 
 西村社長は、「HACの新体制の下で起きた重大インシデントとその後の対応が至らず株主、社員、お客様に本当に申し訳ない気持ちだった」と語り、「私が社員の先頭に立って、安全管理体制の再構築を図ることが一番大事な責任の果たし方だと思った。安全管理体制の構築が固まった段階で一定の管理上の責任を明確にすることが必要だと思っていた」とし、報酬の10%返上を1ヵ月自らに課すことを決めたという。
 
 西村社長は、この件についてこれ以上話すことはないとして、責任の取り方に対する記者の質問を受けないとバリアーを張った。それでも、質問してくる記者に対して怒りを滲ませた表情で「これが私の責任の取り方」と気色ばむ一幕もあった。
 
 また、会見では今期の修正計画も明らかにされ、異常降下したトラブル機のエンジン交換による運休など336便の減収が5300万円、丘珠―女満別線がJALの新千歳―女満別線の増便で7~8月に大幅減になったこと、天候やエンジン故障などによる減便も重なり、当初計画より1億4500万円の減収となる。しかし、プラス要因として奥尻線や10月から始まる丘珠―利尻線の離島航路の補助金7500万円が年度内に計上される制度に変わったことによって、計画比で9100万円の減収にとどまることを示した。
 
 また、2012年度以降の経常利益は、12年度1億5300万円、13年度1億900万円、14年度1億2800万円となる修正計画も明らかにした。


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