減反で生産調整している道内のコメ不作付地に牛の餌として注目されている稲WCS(ホール・クロップ・サイレージ)を作付けする動きが出ている。愛別町で先行しているが、道内で100㌶の栽培面積に広がる可能性が出てきた。肉牛には、繊維質のおかずとして稲わらが必要だが、稲WCSはそれに代わるものとしても注目されている。コープさっぽろでは、この稲WCSを食べさせた肉牛の販売を検討している。(写真は、コープさっぽろで開かれた新規需要米協議会。ここで稲WCSの最新情報も報告された)
稲WCSは、稲(子実)の完熟前に茎葉と子実を同時に収穫して、細断・密封貯蔵し乳酸発酵によってサイレージ調整した粗飼料。本州方面では、この稲WCSが肉牛の貴重なおかずとして注目されている。
主食のコメは生産量が減っており、生産調整によって畑作などに転換するか、休耕田とするかが選択肢としてあるが、休耕して不作付地が増えてしまうと食料自給率の減少や農地の荒廃に繋がってしまう。
このため、生産調整としてカウントされる新規需要米などの栽培が活発化してきた。
新規需要米の中で飼料米はコメの部分を鶏や豚、乳牛に食べさせるもので、飼料米を与えた鶏や豚、乳業から取れる卵や肉、生乳は差別化された食品として流通が始まっている。
稲WCSは、コメと茎葉を分けずに収穫するもので、肉牛のおかずとして利用が期待できる。道内では、2001年ころから愛別町で先行した取り組みが始まった。
愛別町では、この稲WCSを普及させるために、05年に収穫と調整作業を行う愛別町稲発酵粗飼料生産部会が発足、09年には十勝地方の肉牛生産農家との取り引きが開始されている。
03年に町内1戸の農家が2・1㌶で栽培し42㌧の稲WCSを生産して以降、徐々に作付農家が増えて、10年には17戸、35・7㌶、520㌧の稲WCSが生産されている。
11年には栽培面積が50㌶、生産量も800㌧になると見られているが、全国では1万6000㌶で稲WCSが栽培されていることから、道内でもさらに栽培面積は増えていくと見られる。
道内では稲わらが降雪のために生産されていないため、肉牛農家は本州方面から稲わらを購入している。減反農家が稲WCSの生産に取り組めば、肉牛飼料の一部を地産地消でき、餌のトレーサビリティにも繋がる。コープさっぽろでは、稲WCSを食べさせた肉牛の肉を販売する方向で検討している。