ニセコの夏の観光シーズンに尻別川のラフティングなどを導入し、長期滞在・通年型リゾートを実現させたNACニセコアドベンチャーセンター代表取締役のロス・フィンドレー氏が、札幌学院大学経済学部で特別講義を行い、ラフティングを始めたきっかけやニセコがリゾートとしてさらに発展していくためのポイントを語った。(写真は、ロス・フィンドレー氏)
フィンドレー氏は1988年にオーストラリアから日本を訪れ、ニセコを中心にスキーインストラクターやガイドを経験。95年、30歳のときにニセコにNACを200万円程度の元手でスタートさせた。
「ニセコは夏になるとペンションも閉まってやることがない。夏にやることがあったら人が集まるのではないかと考えて尻別川を下るラフティングを思いついた。私はカヤックをやっていたが、カヤックは難しくてすぐにひっくり返ってしまう。リゾートに大切なことは、誰でもすぐにできて、リーズナブルな価格で楽しめること」とラフティングを始めた経緯を紹介。
フィンドレー氏は、「やるか」、「やらないか」――リスクを取らないと何事も進まないとして、100~200万円でNACを立ち上げた。この金額であれば仮に失敗しても返せる額と考えたからだという。
最初は、ボート1台を夫人と2人で操り、オールは木で作った自家製。川を下るとオールが毎回壊れてしまうので、毎日壊れたオールを直す繰り返しだったそうだ。
「北海道で初めてのラフティング会社だったので、毎日新しいアイデアを考えてチャレンジ、川を下るドキドキさがすごく楽しかった」と振り返る。
今では、スタッフ70人、パートを含めると102人の会社に成長し、バス6台に社有車も多数保有。NACから6人が独立して新しいビジネスをニセコで始めるなど大きな経済効果を生むまでになっている。
「社員やその家族、私自身にも4人の子供がいるが、観光を通してお金を作らなければいけない。責任者として今後もリスクをとっていかなければならない」と経営者としての悩みも滲ませた。
ニセコが通年型リゾートに変貌したことで、ニセコには若者が移住してくるなど人口が増加している。倶知安町の駅前通にある商店街には、この1年で8店舗が新たにオープンしている。
「北海道の他の町村で人口が増加したり、新規店舗が続々オープンする町があるだろうか。素晴らしいこと」と強調した。
フィンドレー氏は、北海道のリゾートの問題点として、ワン・リゾート、ワン・オーナーであることを指摘。町にカネが落ちずオーナーのところにカネが集まることが北海道のリゾートが発展していかない理由に挙げた。「大切なことは、町の観光業者だけでなく、小さな商店やガソリンスタンド、理容店などにもお金が入っていくこと。そうすれば地元の人たちも喜んで力を入れるから新しいビジネスチャンスがどんどん出てくる。町の人口も増えていく」
また、皆を引っ張っていくリーダーが必要不可欠と言う。リーダーがいなければ全体像が見えなくなって方向性やリスクを取ろうという意欲が萎む。「簡単な言葉で皆を引っ張っていけるリーダーがいればうまくいくだろう」と人材の重要性を語っていた。
最後に、政府観光庁や道庁がニセコを見る目をこう総括した――「ニセコの魅力をきちんと掴んでいないのではないか。自分の足に躓いて転んでいる感じがする」