北海道と公益社団法人北海道観光振興機構は21日、北海道観光を戦略的に底上げするため北洋銀行、北海道銀行の地銀2行と日本政策投資銀行北海道支店を含めた5者と「北海道観光の振興に向けた協力連携協定」を締結した。金融機関同士が個別のプロジェクトで協力関係を築くケースはあるが、ひとつの産業分野で包括的に相互協力体制を敷くのは珍しい。(写真は、連携協定締結で手を重ねる関係者。左から笹原晶博・道銀頭取、堰八義博・道観光振興機構会長(道銀会長)、高橋はるみ知事、石井純二・北洋銀頭取、松嶋一重・政投銀道支店支配人)
北海道観光振興機構は、観光庁から観光地づくりの舵取り役として観光関連分野の合意形成・調整を図り、戦略を策定する「広域連携DMO(ディストネーション・マネジメント/マーケティング・オーガニゼーション)」として全国4件の1件に登録されている。観光に関して北海道全体の将来見通しやマーケティング戦略を策定するなど、全道の観光地域づくりを支援する役割を担っている。
また、地域ごとに観光地づくりを進める「地域連携DMO」も道内では釧路や富良野など4件の観光組織が登録されているが、さらに地域連携DMOを増やすことで地域一体となった観光への取り組みを進める必要性が高まっている。
このため、広域連携DMOの道観光振興機構と道、金融機関3者が連携して地域ごとのDMO形成を働き掛けるとともに、金融機関の強みである多様なネットワークや人材・ノウハウを活用したコンサルティングにより地域で総合的な観光戦略を練り上げる土壌づくりに協力する。地域連携DMO同士のネットワーク構築にも取り組む。
地域連携DMOが機能すれば、面として地域の観光振興の処方箋が描けるようになりホテル・旅館や飲食、物販施設、交通事業者、農林水産業者など観光に関わる事業者の投資環境も改善する。
道は訪日外国人来道者を2020年までに500万人にする目標を掲げている。連携協定に調印した高橋はるみ知事は、「今回の5者連携で地域の稼ぐ力を引き出し、観光をリーディング産業として取り組みたい」と話した。
道観光振興機構の堰八義博会長は、「観光を盛り上げるプラットフォームが完成した。従来の観光の枠を超えて地域経済の底上げに繋げたい」と語った。
金融機関、とりわけ地銀同士はライバル関係にあり地域ごとの連携や個別プロジェクトの協調はあっても、ヘッドオフィスが関わる包括的な連携は珍しい。今後は地域の信用金庫や信用組合なども含め重層的な取り組みを目指し、オール北海道による観光活性化ファンドなどの立ち上げも検討される可能性がある。