TPP道民シンポジウムで東大鈴木教授が「日本は世界有数の農業開国」と政府・経済界批判を連発

農業・水産業

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 TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加の是非を政府が6月に決めることに反対するための道民シンポジウム「ともに考えよう『この国のかたち』」が8日、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。JA北海道中央会、道漁連、北海道森林組合連合会の共催で約500人が参加、講演やバネルディスカッションで様々な角度からTPPの危険性が訴えられた。(写真は、シンポジウムで基調講演する鈴木宣弘東大大学院教授)


 基調講演で東大大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘氏は、「真の国益とは何か~TPPをめぐる国民的議論を深めるために」と題して講演、ユーモアを交えた話に、会場から笑いを誘いながら分かりやすくTPPの本質を訴えかけた。
 鈴木氏は、「日本の農業は世界で一番開放されている。食料自給率は40%で海外から60%を輸入しており、そのうちの半分はアメリカ、残りの半分は中国からと言ってもよい。だから、あなたの身体の中はアメリカと中国で半分は作られているようなもの」と述べ、「これほど農業市場を開放している国は世界にない」と強調した。
 関税をゼロにした林業を引き合いに、「その結果林業の競争力がなくなって森林を手放すことになり、今では外国人がその森林を買っている。農林水産業は国境を防御しているという感覚が全くないのはおかしい」と政府の姿勢を追及した。
 また、経済界(「ただし道経済連合会は除く」と、鈴木氏は度々留保条件をつけていた)が、自由貿易の障害として農業をやり玉に挙げることに対しても「真相は違う」と述べ、「例えば韓国との自由貿易協定の見返りに、韓国側が日本の経済界に対して技術協力を申し入れると、経団連は『そんなことをしてやる必要はない』と交渉を止めてしまう。そんな産業界の姿勢に韓国や他の相手国も怒ってしまう場面がよくある。一番自由貿易をやりたい当事者が交渉を止めているのに、彼らが公式には『農業のために決まらなかった』と言う。農業保護が国益に反していると言うことは断じてない」と交渉の内幕も暴露しながら真相を解説した。
 さらに、アメリカは農産物の輸出補助金として約1兆円を使っていることに言及、「日本は輸出補助金がゼロ。TPPでアメリカの輸出補助金は野放しなのに、相手国に関税ゼロを求めるのは不公平そのもの。日本はWTOの優等生で価格を支える制度は残っていない」と訴えた。
 日本が今後成長を求めるのは中国などアジアで、それらの国々と友好関係を築くのが第一歩だが、それを最も嫌がるのはアメリカ。「アジアを分断して成長のエネルギーをつまみ食いしようという米国が考えたのがTPPに他ならない」と鈴木氏は、TPPの本質をこう指摘していた。
 

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