札幌国際大学学長の濱田康行学長が、北大大学院経済学研究科の教授のころから続けている1年間の経済情勢を占う「ハマダ予想」――今回は、今年の「株価」、「金利」、「為替」の動向について。
前回の国内経済情勢を踏まえたうえで、濱田氏はどう占うか。
まず、「株価」。楽観論は12000円。信用取引の倍率、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)など指標から見ればすべて買い。利回りは2~3%で三菱商事などの優良株で3%に近い。買うのなら倒産確率の低い銘柄で利回りの高いもの。一番遅れているのが金融株。野村證券が一時400円台になったのは、この業界の未来を人々が疑っている証拠といえる。みずほFGもかなり安い。
証券界にはこんな言葉がある。
《自分のために買う株は儲からないが、孫のために買う株は儲かる。息子のために買うのは馬鹿者だ》――12000円はもうすぐ、8000円は割れない。
悲観論は、減税の終わりと財政の手詰まり。金融政策が機能せずにドル換算したときの日経平均がそこそこなら、投資家の40%が外国人であり、円高・為替利益は大きき外国人投資家は現在の株価水準で満足しているかも知れない。
上値を追い、売る可能性もあるが利益確定売りで世界を見渡すと、アメリカ、ユーロ圏よりも上値余地の大きい日本株をポートフォリオに入れる可能性は高い。低金利も支援材料。株は銀行金利の20倍というのは異常だ。
次に、「金利」。
上がらないし、上げられないだろう。少なくとも日銀から動くことはできない。全国の金融機関、特に地方銀行や信用金庫は資産の3~4割が国債。金利が上昇すれば国債が値下がりし、黒字化している金融機関の業績は「赤字→貸し出し抑制→不況」という図式になってしまう。
別のシナリオは出しすぎた国債の価値が疑われ暴落し結果として長期金利が急騰するケースだ。これも企業を直撃する。借り換えが不能になるか、追加金利を求められることになり、今必要なことは長期固定で借入を安定させて財務基盤の強化を図ること。変動金利でもよいから資金が引き揚げられないようにしておくことがポイント。
短期金利は、インフレにならない限り上昇しない。しかし、今インフレに火がついたら世界中で手がつけられなくなる。ペーパーマネーの世界は突然に終わり、モノに変える動きが進めば貨幣は機能しなくなる。
インフレターゲット政策は、極めて危険だ。野原に火をつけて、どうやって消すのか。
金余りは、儲かっている企業ほど顕著。100兆円近い余剰金がある。しかし、投資に向かわない。デフレは、何もしなくても貨幣の価値が上がる。投資してもリスクが増えるだけで利益率は上がらない。
最後に、「為替」。
円高は80円で終わり円安へ行く。一般歳入よりも国債発行の多い国は日本以外にあるのか。菅政権に増税が出来ると思えない。子ども手当て、農家の所得補償もバラマキ批判で効果は見えてこない。
財政危機が最もひどいのは日本ということを世界が認識してしまう日が来そうな予感がある。
米国格付け会社は日本国債の格付けを下げたが、半年前に格下げ検討中と予告信号弾があったためにそれほどの影響はなかった。しかし、今度下げられたらかなり影響する。
外国人が売り、手にした円を他の通貨へ振り向け、円売りが始まり円安にという図式だ。「金融機関決算の不振→貸し出し減→中小企業不況→円安」と繋がって、いよいよ日本人さえもが、日本の国債を危ないと思い始める。これは最悪のシナリオになる。
どの通過に対して円安になるか。アメリカはゼロ金利を続けられず、早晩出口戦略に向かう。一番早く出口に行きたいのは欧州。ペーパーマネーのバラマキをやめた国の通貨は高くなる。出口に到着するのが最後になりそうなのが日本。
ドルやユーロに対してさえ円は値下がりするだろう。
最も大きな変動は資源国系の通貨に対して。オーストラリア、ブラジル、南ア連邦などは通貨量が少なく変動が大きい。
株は高くなり、金利は動かず、円安方向へ――というのが、今年1年の「ハマダ予想」の結論になる。
濱田氏は日本国債の信用性について微妙な段階と見る。現状の国債は「裸の王様」で、着物を着せているのは国民。誰かが「王様は裸だ」と言えば、国民が疑い始める。そうなると危険なサイクルが回り始める。ジワジワとさがるのではなく、瞬間大暴落の可能性もありそう。綱渡りの経済であることは間違いない。