コープさっぽろ農業賞が来年度で終了する。04年から始まり今年で7回目を迎えたが、11年の8回目で幕を閉じることになる。農業賞はホクレンも制定して毎年表彰を行ってきたが3年前に廃止している。農水産業など一次産業が経済の中核になっている北海道に相応しい農業賞が相次いで廃止される背景には何があるのか。
コープさっぽろ農業賞は、消費者の目線で選ぶ農業賞として注目されている。06年からは漁業の部も設けて農業と漁業も対象に加えた。選考には書類審査だけでなく、審査員が生産者の現場に直接出向き、畑や魚場、倉庫などの状況も見て選ぶため、消費者から見て安心と安全が担保された農畜水産物の生産者として認められたことになる。
毎年審査委員長を務める北大大学院農学研究科教授の飯澤理一郎さんは、「生産者と消費者を結びつけて、安全・安心な北海道の農畜水産物を全国に発信していこうというのが、この農業賞の目的。生産者と消費者の心の結びつきを培う取り組みは、北の大地で定着してきた」とコープ農業賞の意義を強調している。
11月12日、札幌パークホテルで第7回コープさっぽろ農業賞の表彰式が行われたが、大見英明理事長は冒頭の挨拶で来年度で一旦終了することを明らかにした。大見理事長は、終了する理由として「7回目になって応募者が重複することもあり転換点に来たと判断した。見直しが必要なため」と言う。
ただ、農業賞に込められた意義である生産者と消費者をつなぐ役割や交流活動、事業活動については何らかの形で継続していく考えで、12年以降については農業賞以外の方向性を出していく考えも表明した。
コープ農業賞は副賞として賞金が贈られるが賞金の総額は470万円。さらに審査委員15人程度が4泊5日で現地審査を行うなど人手と労力と経費は相当なものにのぼると見られる。
さらに、賞の受賞者はどうしても農協ではなくユニークな差別化を図っている農業生産法人が対象になることが多いため、ホクレン等の系統組織との関係も微妙にならざるを得ない背景もあったようだ。
ホクレンが農業賞を終了したのは、同じ組合員同士の中で優劣をつけることが協同の精神にそぐわないのではないかという意見が原因の一つになったのも事実。コープさっぽろもホクレンと同じ協同組合組織であり、協同組合がこうした顕彰制度を取り入れることにプリミティブな問題があるのかもしれない。
コープさっぽろが来年で農業賞を中止することになれば、残るのはHAL財団(財団法人北海道農業企業化研究所)の農業賞だけ。かつて3つの農業賞が覇を競っていた賑わいが消えるのは生産者にとっても寂しいことに違いない。
(写真は、コープさっぽろ農業賞の表彰式)