道警元総務部長VS道新、札幌高裁も名誉毀損認める

マスコミ


道警元総務部長の佐々木友善さん(66)が、取材をせずに虚偽のことを書かれて名誉を毀損されたとして記事を書いた道新記者2人と道新、本を出版した旬報社、講談社を訴えていた裁判の控訴審判決が10月26日に札幌高裁(井上哲男裁判長)であった。判決は、一審判決の72万円の賠償命令を認め、一審に続き二審も道新側の敗訴になった。
記事を書いた道新の佐藤一記者と高田昌幸記者は上告の意思を明らかにしたが、佐々木氏は明言しなかった。


佐々木氏は、「道新に申し上げたいことは、いかなる場合でも捏造記事は書いてはならない。この判決を真摯に受け止めて再発防止策を講じて国民の前に示して欲しい。それが報道機関のあるべき姿」と判決後にコメントした。
佐々木氏は、問題の記事が書かれた当時は道警の総務部長というプロパーでは最高位のポストに就いていた。「当時私は道警不正経理の問題で苦しい立場にあった時期。捏造記事を書かれてもそれに抗議するのは弱い立場であったため、しにくい状況だった。(道新記者の)弱い立場に付け込むように、ないことをあったように書かれた。苦しい立場であったが、そういうことに歯止めをかける、しっかりとはっきりさせるのが世のため人のためになると提訴した。いわば社会貢献的訴訟。私が弱い立場なのに頑張り通せた力の源泉はそういうことだった」と佐々木氏は初めて裁判に臨んだ心の内を明らかにした。
一方、敗訴した道新記者2人は記者2人の弁護をしている清水勉弁護士とともに会見。「こちらの主張が全く認められなかった。上告する」と述べた。
清水弁護士は、「裁判官の常識は一般マスコミの常識とかけ離れている。一審のハードルを下げて報道する側に厳しいものになっている。最高裁の判断を仰ぐ。日本の言論の自由のためにこの判断を維持することはまずいだろう」と判決を強く批判した。
佐藤記者は、「現場に近しい報道の立場で言えば、エピソード的なこともきちんとあったことを必要だから記事にしている。それが調査報道。報道の現場で萎縮があるが、一人ひとりの記者が自分の気持ち、志に沿って書いていいこと悪いことを実証させていきたい。細かいエピソードが大きなものに当たる可能性もある。きちんと書くことを問い直すきっかけにしたい」と上告審に臨む気持ちを表明した。
札幌高裁での判決言い渡しはわずか1分。午後3時から行われた佐々木氏の会見は約15分、道新記者らの会見は約55分に及んだ。
道新記者2人は上告を明言したが、佐々木氏は態度を保留している。佐々木氏の提訴から4年、それ以前の道新への抗議を始めてから6年が経過している。最高裁で争われることが確実なため、最終的な答えがでるまでには、さらに時を重ねることになる。
(写真は、札幌高裁判決後に記者会見する道新記者2人と代理人)

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER